不正競争防止法における司法解釈に関する最新の要点整理

2022. 3. 25

不正競争防止法における司法解釈に関する最新の要点整理

 シニアパートナー弁護士 張駿


   2022年3月17日、最高人民法院は「最高人民法院による『中華人民共和国不正競争防止法』の適用に関する若干問題の解釈」(以下は「新司法解釈」と略称する)を公布した。「新司法解釈」は計29条あり、「中華人民共和国不正競争防止法」は2017年と2019年に改正した内容を適用する以外に、主に近年の司法における実務上の関連裁判規則に対して総括を行った。内容から見ると、当該解釈が規則の牽引、競争政策の基盤をさらに強化し、競争案件の裁判規則をさらに改善することは、市場経済のイノベーションと健全な発展にとって有利である。そこで、「不正競争防止法」の構成に基づき、「新司法解釈」の要点に就き下記の通りに整理しましたので、ご参考にして頂ければ幸甚です。

一.  「不正競争防止法」第二条の適用に関する指導
   「不正競争防止法」第二条第二項(一般条項)はすでに人民法院が新たな不正競争行為を認定する主な法的根拠となっている。しかし、適用の原則的な指導に欠けていることにより、裁判基準が統一されていない現象が時折発生している。「新司法解釈」第一条は「経営者が市場の競争秩序を乱し、他の経営者あるいは消費者の合法権益を損ない、且つ、不正競争防止法第二章及び特許法、商標法、著作権法等の規定に違反する行為に属さない場合、人民法院は不正競争防止法第二条を適用し、これを認定することができる」と明確にした。当該条項は一般条項の適用原則を明確にしている。即ち、まず適用内容が明確な「不正競争防止法」第二章及び特許法、商標法、著作権法の規則は行為に対して判断を行うが、行為類型が判断できない場合、「不正競争防止法」の一般条項を再度適用して、認定する。

二.  「他の経営者」の内在的構成要素の線引き
   「不正競争防止法」に関わる司法実務では、「他の経営者」である原告の地位をどのように確定するかについて、明確に規定していなかった。「新司法解釈」第一条では、「経営者と生産経営活動において取引機会を奪い合い、競争優位を損なう等の関係がある市場主体」と明確に定めている。その解釈は、原告の主体資格の認定に有利であり、不正競争行為による損害を受けた主体を「経営者と競争関係がある市場主体」の範囲に制限した。

三. 「商業道徳」を初めて認定する法律指導
   「新司法解釈」第三条では、「不正競争防止法」における「商業道徳」の商業理論属性は、特定の商業領域における普遍的な遵守事項と認可された行為規範であるべきことを明確にした。特に、新たな業態でまだ公認されていない行為基準について、法院は業界の効率、競争秩序、損害程度、業界発展、消費者福利等の要素を総合的に考慮し、特定の商業領域の商業道徳を「制定」することを明確にした。

四.  「模造・混同」に関する条項の細分化
1. 商品標識をさらに具体化
   「新司法解釈」第四条では、「一定の影響がある標識」について、正面から定義原則を明確している。すなわち「一定の市場知名度があり、且、商品の出所を区別できる顕著な特徴があり」、併せて、市場知名度を認定する際に、「中国国内の関連公衆の周知程度を総合的に考慮する」必要があると強調している。第五条では、「一定の影響がある標識」を認定するために、ネガティブリストには、「商品の通用名称、図形、型番」等如くは、商品の出所を区別できる顕著な特徴のある要素を有しておらず、商標標識において「顕著な特徴に欠ける」状況であると記載している。

2. 「内装」の内在的構成要素と延伸を明確化
   「新司法解釈」第八条では、「不正競争防止法」第六条第一条項第一項に定めた「他人に一定の影響がある商品名称、包装、内装等と同様、あるいは類似の標識を勝手に使用してはいけない」の中の「内装」を、「経営者の経営場所の装飾、営業用具の様式、従業員の服装等により独自のスタイルを構成する全体的な経営イメージ」まで延伸した。経営場所等で構成した「全体的な経営イメージ」は明らかに商品(サービス)の範囲に属さなかったことから、「新司法解釈」では一定の程度で、今まで「内装」の認定が商品に限られていた制限を突破し、実務上の競争における各類の模造混同行為に対する規制要求に対応している。

3. 「一定の影響がある会社名」の認定範囲を拡大
   「新司法解釈」第九条では、「一定の影響がある個人経営者、農民専門合作社(聯合社)、及び法律、行政規定が定めた他の市場主体名称(略称、商号等を含む)」を「一定の影響がある企業名称」として認定している。厳格に言うと、「個人経営者」は「企業」に属さないため、一定の影響がある個人経営者名称は第六条による不正競争防止保護に適用するか否かについて、過去の司法実務では争議があった。「新司法解釈」第九条第二項では、開放条項設置の列挙を通じて、市場主体に対する平等な基本的態度をより良く示している。

4. 「使用」行為の判断基準を細分化
   過去の司法解釈と比べると、「新司法解釈」第十条の文面では「商品出所を識別する行為」を追加しており、「不正競争防止法」第六条で定めた「一定の影響がある」標識の使用の本質とは、類似する商標商品サービスの出所の指向性が発揮することであるとさらに強調している。同時に、販売行為が権利侵害になったが、「合法出所」の抗弁に適用することを明確にした。即ち、販売者は商品の権利侵害行為を知らなかった、または知るわけではなかった場合、当該商品が合法的に取得したものであり、且、提供者の説明ができれば、賠償責任を負わないものとする。また、「新司法解釈」第十五条は、他人が混同行為を実施するのを故意に幇助することも共同権利侵害になると明確にしている。

5. 混同行為の客体類型を追加
   「不正競争防止法」第六条では、混同行為の客体類型を列挙している。それは、即ち、商品標識、民事主体名称及びインターネット標識である。「新司法解釈」第十三条第一項では、一定の影響がある他の標識も、「不正競争防止法」第六条第四項に基づき認定できると初めて規定した。当該規定は、ソーシャルメディアユーザーの新型商業標識による「不正競争防止法」の保護の適用に明確な法律根拠を提出した。
   また、「新司法解釈」では、「他人が登録した、あるいは登録していない有名な商標を企業名称の商号として利用すること」には「不正競争防止法」第六条を適用することを明確にした。過去の実務では、「不正競争防止法」のどの条項を適用するかについて、明確にしていなかった。「新司法解釈」では、その状況が「不正競争防止法」第六条第四項を適用することを明確にしており、その種類の案件の裁判根拠を統一することに有利である。

五.  「誤解を招く商業宣伝」を明確化
   「新司法解釈」第十七条では、「誤解を招く商業宣伝行為」は、「誤解を招く」を核心的な判断条件とすべきであることを強調しており、それは2017年の「不正競争防止法」改正に対応し、「誤解を招く虚偽宣伝」を「誤解を招く商業宣伝」に変更した。但し残念ながら、第十七条前三項の内容は「誤解を招く」の認定基準について、具体的な説明がなされていない。

六.  「不正競争防止法」第四章法律責任に対する解釈
   当該章の内容に対する解釈は主に法定賠償の範囲を拡大した。「新司法解釈」第二十三条では、法定賠償金額の範囲を「『不正競争防止法」第二条(一般条項)、第八条(誤解を招く商業宣伝)、第十一条(商業中傷)、第十二条(インターネット特別条項)」までに拡大し、その解釈は「不正競争防止法」が定めている現有の範囲を突破したようである。

   また、「新司法解釈」はインターネット経済の特徴に合わせ、インターネット領域の不正競争防止条項について、特別の条項で解釈を行っている。従って、「新司法解釈」の実施は、市場において健全な競争を構築する指導を行うのに有利であり、新興商業領域の発展に対して必要な規則手引を提供しており、それと同時に、充分なイノベーション及び発展のスペースを留保していることで、実施効果が大いに期待できる。
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