事例分析 | 美術作品の合理的な使用に関する認定の実践

2021. 4. 19

事例分析 | 美術作品の合理的な使用に関する認定の実践

   中国の著作権法では著作権者のために一連の権利が規定されているが、社会のニーズを満たすため、著作権者の権利に対しても一定の制限がある。たとえば、ある条件下で他人が著作権者の許可を経ずにその作品を使用できることは著作権法の合理的な使用制度である。著作権法第二十二条では、次のような状況で作品を使用する場合、著作権者の許可を経ず、報酬の支払を行わないことができるが、その場合、作者の名前、作品の名称を明示し、また著作権者が本法によって享受するその他の権利を侵害してはならないとしている:以下の(二)のとおり、ある作品を紹介し、評論したり、ある問題を説明したりするために、作品の中で他人が発表した作品を適切に引用すること。 
   しかし、実務の中で一部の企業においては往々にして他人の作品を使いながら、説明や紹介に利用するだけで、直接利益を得ていないため権利侵害行為にならないと誤認していることがある。 
   以下は典型的な事案を通して美術作品の合理的な使用問題を解説するので、多くの読者のお役に立てることができれば幸甚である。 

一、基本的な情状:  
  • 事例は上海美術電影制作場(以下「上美場」という)が浙江新影年代文化伝播有限公司(以下「新影公司」という)の著作権侵害を訴えた案件である。 
  • 上美場は、前世纪80年代に「葫芦娃」「黒猫警长」の二つのアニメを制作した。この二つのアニメは広く好評を得て、それから数年の间に、さまざまなテレビメディアで広く放送されていた。二つの作品の中の「葫芦娃」、「黒猫警长」も代表的なアニメキャラクターとなっている。
  • 新影公司は映画「80後(注:1980年代生まれ)の独立宣言」を撮影製作、当該映画の主な内容は80後の若者が卒業後、農村に行って自主的に創業するという話を題材に制作されている。同映画の広報活動では、この「葫芦娃」や「黒猫警长」のキャラクターを含むポスターを制作・発表した。このポスターの目立つ部分は主人公の顔と名前などの情報で、背景にはテレビやミシンなどの日常用品や、ブリキのカエルやオハジキなどのおもちゃや事案に関わるキャラクターなど様々な画像が点在している。アニメのキャラクターは主人公の両側にいるが、前述の日用品やおもちゃなどの他の美術の画像と同じ大きさで、主人公の画像よりは小さいものである。
  • 上海知的財産権裁判所の最終審判決では、新影公司は上美場の関連の美術作品を合理的に使用していると判断し、上美場の控訴請求を却下した。

 二、「合理的な使用」を構成する二つのポイント
(一)使用が変換性の使用を構成するかどうか
   本件において、二審裁判所は、合理的な使用の認定は特殊な状況に限定され、かつ作品の正常な使用と矛盾していないとして、権利者の合法的権益を不合理に損なうものではないと判断した。具体的には、引用作品の目的、引用作品の新作における比率、権利者の正常な使用に影響するかどうか、権利者に不合理な損害を与えるかどうかなどを総合的に考慮しなければならないとした。
   この案件の中で、新影公司の映画「80後の独立宣言」は80後世代の成長過程を体現した映画で、そのポスターの中で上美場の代表的なアニメーション作品中の芸術画像(葫芦娃、黒猫警長など)を使っている。これらの画像は1980~90年代に広く放送されたアニメーションの典型的画像で、80年代に生まれたグループの子供時代に伴い、この年齢層の年齢特徴を体現しており、同じく映画の主人公の年齢特徴に合致している。すなわち、その芸術的機能は、80後世代の思い出を喚起するもので、元の作品の芸術的機能とは異なっており、その使用によって上美場が権利者として作品に対して正常に使用されることには影響していないとした。

(二)引用の適切性に関する問題
   前文の事案紹介にも述べたよう、関連ポスターの中には、上美場のアニメキャラクターはポスターの中の主人公人物より小さいもので、また、他の背景としての美術作品の大きさに相当している。すなわち、当該アニメのキャラクターもポスターの背景として使われている。
   また、人々にとって、関連キャラクターの画像を見ることはアニメに関する連想を喚起しますが、それによって原作を鑑賞することを放棄することになるわけではなく、人々はこれらのイメージを見て、かえって当事案のアニメを鑑賞する意欲を誘発する可能性がある。そのため、ポスターにこれらの画像を使っても、元の作品に取って代わる効果はない。
それに、映画のポスターの使用は実際には一時的で、映画のオフラインに伴って、宣伝活動が停止され、関連の影響も次第に消えていく。上美場への影響(プラスもマイナスも)は、かなり短期的なものである。
   これらの要因に基づいて、最終的には裁判所もポスターでの関連画像の使用は、適度な引用の範囲を超えていないと主張している。これは裁判所の最終判決が「合理的な使用」を構成する(合理的な使用と見なされる)重要な要素となっている。

三、関連して啓発される点
   この典型的事案の情状及び裁判所の判決によると、関連業務活動において他人の作品を使用する場合、直接的に利益を得るかどうかなどの要素を除いて、上記の二つの重要な点を考慮する必要がある。
筆者の理解では、次のように要約される。
   一つは、他人の作品の原意(元の内容、プロット)を使うか、それとも新しい意味に基づいて使うかを判断するとのこと。原作とは違った価値、意味を持つほど、合理的な使用と見なされるようになる。
   もう一つは、際立って使われるかどうか、即ちオリジナル作品を使った新作で、オリジナル作品がメイン構成部分とされているかどうかを判断すること。使用範囲が小さく、少ないほど、目立たなくなり、使用時間が短いほど、合理的な使用と見なされるようになる。   
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