「長期介護保険」とは何か、企業には法的加入義務があるか?
2026. 10. 22
「長期介護保険」とは何か、企業には法的加入義務があるか?

Q:「長期介護保険」とは何か、企業には法的加入義務があるか?
A: 長期介護保険は中国の社会保険体系における独立した保険種目であり、企業は法令に基づき、加入義務を負う。ただし、具体的な加入手続きなどについては、企業の所在地の規定によるものとする。
一、長期介護保険の主な内容
長期介護保険(以下、長護保険という)は、養老保険、医療保険、労災保険、失業保険及び生育保険の五つの社会保険に次ぐ「第六の保険」と称されている。これは、要介護者に、介護保障を提供することを目的とする社会保険制度である。被保険者が加齢、疾病、傷害等の原因により、日常生活を自立して営むことが困難となり、長期的な介護を必要とする場合、長護保険は所定の介護サービス費用を給付することにより、家族の介護負担及び経済的負担の軽減を図るものである。
長護保険制度は、現時点ではなお導入初期の段階にあり、重度要介護者を重点的な保障対象としている。国は要介護度の認定について、統一基準を定めており、軽度、中度及び重度の3段階に区分している。所定の規定に従って保険料を納付し、かつ、要介護状態が6か月以上継続している者のうち、申請を経て認定評価により重度要介護(3級以上)と判定された者に限り、長護保険の給付を受けることができる。今後、全面的な展開を伴い、保障対象者の範囲は段階的に拡大される予定である。
二、企業は法的な加入義務を負うが、地域によって実施状況が異なる
中国共産党中央委員会弁公庁及び国務院弁公庁は2026年3月25日、「長期介護保険制度整備の加速に関する意見」を公表し、雇用機関(企業、事業団体、政府機関及び社会組織を含む)並びに当該雇用機関に雇用される従業員などは、所在地管理の原則に従って長期介護保険に加入する旨を明確にした。その後、国家医療保障局などの8部門は、「長期介護保険制度整備の加速に関する実施方案に関する通知」を共同で公表し、長護保険の保険料は雇用機関及び従業員が共同で負担し、従業員の基本医療保険料と併せて納付することをさらに明確にした。納付の総合料率は約0.3%とされ、雇用機関と従業員が同率で分担し、それぞれ約0.15%とする。雇用機関の納付基数は従業員の賃金総額とし、従業員個人の納付基数は本人の賃金収入とする。ただし、各地方は、実情に応じて雇用機関の料率を合理的に調整することが認められている。
全国的な長護保険制度は現在、パイロット運用から全国的な制度構築へと推進される段階にある。そのため、長護保険の具体的な運用は、各地方の政策を基準としており、地域によって実施状況に差異が存在する。すなわち、企業が現時点で保険料を納付する必要があるか否か、料率及び納付方法については、所在地の現行政策が実質的な判断基準となる。したがって、企業は所在地の医療保障部門が定める具体的な実施規則を確認し、適用される料率及び納付方法を把握することが望ましい。一律の対応による地方差異を看過したコンプライアンス上のリスクを回避するよう留意する必要がある。
三、上海市の状況
上海市は2016年、国の第一期の長護保険パイロット地区の一つとなった。現在適用されている文書は「上海市長期介護保険試行弁法」(滬府弁規〔2025〕19号)であり、上海市人民政府弁公庁により2025年12月27日に公表され、2026年1月1日より施行され、有効期間は2027年12月31日までとされている。
規定によれば、上海市の職工基本医療保険に加入する人員(第一類人員)は、上海市の長護保険に加入すべきものとされ、上海都市・農村住民基本医療保険(中国語「城乡居民基本医疗保险」という)に加入する満60才以上の人員(第二類人員)も、上海長護保険に加入すべきものとされる。ただし、企業及び個人は通常、「長護保険の加入手続き」を別途行う必要がなく、その登録及び納付は、職工基本医療保険又は住民医療保険の徴収と連動される仕組みとなっている。
上海市の現行制度では、医療保険基金からの資金調整により、長護保険の財源を確保する方式が採用されている。第一類人員については、企業に係る職工基本医療保険の納付基数の0.5%に相当する額を、職工基本医療保険統括基金から四半期ごとに振り替え、第二類人員については、都市・農村住民基本医療保険統括基金から四半期ごとに資金を振り替える。原則として、企業及び個人への新たな保険料負担の追加はない。

