懲戒解雇通知書への解雇事由の正しい記載方法
2026. 8. 12
懲戒解雇通知書への解雇事由の正しい記載方法

Q:会社が規律違反を理由に従業員を解雇したいと考えているところ、ある人から人事担当者が、解雇理由は複数記載しておいたほうが後の仲裁や訴訟に対応する際にハードルが下がる、従業員の違反行為の記載は原則的に記述しておくことで後のリスク低下にもつながるとのアドバイスを受けた。このアドバイスは正しいのか?
A:
1. 実際に従業員に複数の懲戒解雇に相当する規律違反行為が存在し、複数の懲戒事由が構成されるのであれば、解雇通知書に記載することは可能であり、かつ、記載漏れがないほうが望ましいと言える。その理由としては、実務において仲裁機関や裁判所は、使用者が行った懲戒解雇の決定に明示された解雇事由が存在するか否かのみを審査するので、列挙されていないその他の事由については審査しないからである。この点については、最高裁判所が公表した指導事例第180号(孫賢鋒が淮安西区人力資源開発有限公司を訴えた労働契約紛争事件)を参考にすることができる。
もっとも、この種の事件では、使用者は解雇事由の存在についての立証責任を負うことになる。そのため、解雇事由となるべき複数の事由を列挙する場合には、使用者により多くの立証責任の負担が課されることになるだろう。
実務上においては、仲裁や裁判所は複数の違反事由が列挙されている場合、そのうちの一つでも解雇に足りる事由を構成していれば、合法的な解雇事由と認めるのが基本的な考え方である。しかし、その他の列挙事由に対して、もしも事実上の根拠や就業規則上の根拠が完全に欠けている場合には、仲裁機関や裁判所は使用者の解雇決定は慎重さを欠くものであると評価し、その結果、解雇事由を構成しうる他の証拠や理由の認定に影響を及ぼしかねず、かえって使用者にとって厳しい判断が下されることになる恐れがある。
したがって、技術的には違反状況に応じて就業規則上で解雇事由となりうる項目を適宜追加することは可能だが、まったく根拠のない事由を恣意的に羅列すべきではない。
2. 従業員の違反行為の記載方法については、行為の特徴を要約し、使用者の就業規則の規定とあわせて適宜簡略化することは可能である。しかし、就業規則の規定、とりわけその規定が概括的なものである場合に、単に規定を羅列するだけでは足りず、関連する行為について一定の記述をする必要である。
例えば、従業員が虚偽の出張経費を6000元申請し、就業規則に「故意又は重大な過失により会社に5000元を超える損害を与えた場合は解雇できる」と定められている場合、解雇通知書に単に「従業員Aは、故意又は重大な過失により、会社に5000元を超える損害を与え、会社の就業規則に定める解雇処分に該当する」とのみ記載したのでは、具体的にどのような故意又は重大な過失の違反行為があったのかが言及されていない。このような記載では、仲裁や訴訟において、使用者の解雇理由が不明確であると判断され、違法解雇と認定される可能性がある。同じ状況でも、「従業員Aは、虚偽の経費を精算申請する等の行為により会社に誤った立替金を支払わせるように導き、その金額が5000元を超えていることから、就業規則第○条に定める重大な懲戒違反に該当する」と簡潔に記載した場合では、結果がまったく異なるものとなり得る。

