IITで研究参加者が死亡した場合、誰が責任を負うのか?

2026. 7. 1

IITで研究参加者が死亡した場合、誰が責任を負うのか?

Q:IITで研究参加者が死亡した場合、誰が責任を負うのか?

   【事例】
   広州中医薬大学金沙洲病院は、国家医学研究登録情報システムに登録を行わないまま、「BCMA/CD229/FAPを標的とするTRuCT細胞療法による難治性・再発性多発性骨髄腫の先見的研究」を実施し、2021年7月2日から7月25日にかけて、患者に対してTRuCT細胞治療を行った。これに対し、広州市衛生健康委員会は、当該医療機関の医療行為が登録された医療科目の範囲を超えていたことを理由として、行政処分(穗衛医罰〔2021〕00070号)を科した。

   【分析说明】
   IIT(InvestigatorInitiated Trial)とは、研究者が主体となって実施する臨床研究を指す。医療衛生機関が、人(個人または集団)を対象として行う研究活動であり、医薬品や医療機器(体外診断用試薬を含む)などの製品登録を目的としない点に特徴がある。対象は、疾病の原因、診断、治療、リハビリ、予後、予防、管理および健康維持等に関する事項となっている。発起主体は、医療機関内部の研究者であり、通常は臨床医師、看護師、その他の専門技術者である。

   IITの監督管理は医療衛生機関に帰属し、所管は医療衛生行政主管部門で、準拠法令は「医療衛生機関が実施する研究者主導の臨床研究管理弁法(2024年)」である。

   研究目的に基づき被験者へ介入を行うか否かにより、IITは「観察研究」と「介入研究」に分類される。介入研究は、原則として三級医療機関または設区市級以上の医療機関が主導して実施する必要があり、その他の医療機関は参加機関として関与する形となる。さらに、幹細胞に関する臨床研究は、三級甲等病院で実施しなければならず、「幹細胞臨床研究管理弁法(試行)」の規定を満たす必要がある。

   ISTと比較すると、IITは参入要件が相対的に低い制度設計となっている。研究者は立ち上げ段階において所属医療機関へ研究計画書を提出し、科学性審査および倫理審査を通過した後、研究情報を国家医学研究登録情報システムへ登録すれば足りる。研究の進捗を各段階で随時報告する義務も設けられていない。もっとも、研究参加者のインフォームド・コンセント保護については、ISTと基本的に同水準の要件が求められている。

   医療衛生機関は、研究計画に対する「科学性審査」を実施し、研究過程を通じて管理責任を負わなければならない。また、「人を対象とする生物医学研究倫理審査弁法」および「人を対象とする生命科学・医学研究倫理審査弁法」に基づき、倫理委員会を設置し、独立した倫理審査を行う体制を整備する必要がある。

   IITに関するコンプライアンス違反が問題となる場合、医療機関の責任評価においては、主として、①登録を完了しているか、②倫理委員会の審査を経ているか、③研究対象者のインフォームド・コンセントを実質的に保障しているか、という点が検討対象となる。本稿で紹介した事例における行政処分は、まさに「未登録」を理由として科されたものである。

   しかしながら、問題の複雑さはここにある。すなわち、研究参加者が死亡するなど重大な損害が発生した場合、現行の法制度で研究参加者に対して実効的かつ十分な救済を提供できるかについては、必ずしも楽観できない状況にあるのだ。第一に、IITに対するコンプライアンス監督の観点から見ると、現行制度にはいくつかの規制上のチェックポイントが残されている。例えば、科研誠信規範に違反していないか、事前研究の準備不足により臨床研究の実施時期が尚早でなかったか、使用された医薬品や医療機器が関連基準に適合しているか、また臨床研究の安全リスクが実施機関および研究者の管理可能範囲を超えていないか、といった点である。しかし実務上は、これらのチェックポイントには共通の制約がある。すなわち、当該臨床研究が倫理委員会による独立した倫理審査を通過している場合、これらの規制手段の実効性は大きく弱まり、強いコンプライアンス拘束力を持ちにくくなる傾向があるのだ。第二に、商業賄賂や不適切な利益関係の存在も理論上は否定できない。さらに、資金の流れを立証することは容易でないという現実的な問題があり、この監督ルートも実際には十分に機能しにくい状況にある。第三に、手術・処置、物理療法、心理療法、行動介入、診療プロトコル、集団的健康対策、生物医学技術などを介入手段とする臨床研究においては、研究者は原則として、すでに承認上市された医薬品や医療機器を使用し、その承認された適用範囲内、または臨床応用指針に適合する形で実施しなければならない。もし研究者が、安全性や有効性が十分に検証されていない治療製品を独断で使用した場合には、上記要件に違反することとなり、これを根拠として医療機関に対して行政処分が科されることになりうる。しかしながら、介入研究によって研究参加者に生じた生命・健康被害に対する救済については、現状では主に、医療機関が人体損傷の程度に応じて賠償を行う、または合理的な補償を行うという対応にとどまっている。

   現実には、痛ましい事例も少なくない。重篤な疾患や末期疾患を抱えた患者が、学術論文で新興治療法に一定の効果があるという可能性を読んだだけで、溺れる者は藁をもつかむ思いで研究者主導の臨床研究に参加し、場合によっては自ら多額の資金を拠出してまでも、自身の病状に「合わせて用意された」新療法の開発を支援するケースも見受けられる。特に強調したいのは、たとえ重症や末期疾患であっても、IITの研究参加者となる前には、必ず正式なインフォームド・コンセント手続を経て、まだ研究初期段階にあって十分に検証されていない治療製品を受けることに伴う高いリスクについて、十分に評価し、慎重に比較検討すべきであるという点である。

   最後に指摘しておくべき点として、「生物医学における新技術の臨床研究および臨床転化応用の管理条例(2025年)」が2026年5月1日より施行されている。本条例は、「健康状態の評価、疾病の予防・治療、健康増進を目的として、生物学的原理を用い、人体の細胞または分子レベルに作用し、かつ我が国において未だ臨床応用されていない医療専門手段および措置」に適用されるものである。導入事例で取り上げた細胞治療のケースに照らしてみると、仮に当時すでに本条例が施行されていた場合には、当該行為は単に「診療科目の範囲を超えた」という理由による行政処分にとどまらなかった可能性が高い。むしろ、行政の承認を経ずに高リスクの生物医学の新技術臨床研究を無断で実施したとして、より重い法的責任を問われただろう。その意味で、本条例の施行により、高リスク生物医学研究に対する規制の実質的拘束力は大幅に強化されることになったといえる。
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