営業秘密と認定されるには?

2026. 3. 26

営業秘密と認定されるには?

Q:営業秘密と認定されるには?

   A:近年、中国では企業の営業秘密保護がますます重視され、立法・行政執行・司法の各分野において保護強化が進められている。その中で最も重要な問題が、営業秘密をいかに認定するかである。

   「中華人民共和国不正競争防止法(2025年改正)」(以下「不正競争防止法」という)第10条第4項によれば、営業秘密とは「公衆に知られておらず、商業的価値を有し、かつ権利者により相応の秘密保持措置が講じられている技術情報、経営情報等の商業情報」をいう。この定義から、営業秘密の成立には「秘密性」「価値性」「秘匿性」の三要件を同時に満たす必要がある。以下では、「不正競争防止法」および国家市場監督管理総局が新たに公布し、2026年6月1日に施行予定の「営業秘密保護規定」を踏まえ、この問題について説明する。

   1. 営業秘密の認定その一:秘密性

   「秘密性」とは、「不正競争防止法」にいう「公衆に知られていない」ことを意味する。営業秘密の法的保護体系において「秘密性」は基礎であり、他の知的財産権と区別される核心的特徴である。ある情報が秘密性を欠く場合、それがいかに重要であっても、営業秘密として保護されることはない。

   「営業秘密保護規定」第6条第1項によれば「公衆に知られていないとは、営業秘密が侵害されたと疑われる行為が発生した時点において、当該商業情報が当該分野の関係者に一般的に知られておらず、かつ容易に取得できない状態にあることをいう」と規定している。

   同条第2項により「公衆に知られていない」と認められないケースは以下の通り。
  • 当該情報が当該分野における一般常識または業界慣行に属する場合
  • 製品の寸法、構造、材料、部品の単純な組合せに関するもので、当該領域に属する人が市場にある製品を観察するだけで直接取得できる場合
  • 当該情報が公刊物またはその他媒体により既に公開されている場合
  • 当該情報が公開の報告会や展示会等を通じて公表されている場合
  • 当該領域に属する人がその他公開されたルートから取得可能である場合
   第3項では例外として「公衆に知られている情報を整理・改良・加工して新たな情報を形成し、第1項の要件を満たす場合には、公衆に知られていないものとみなす」と規定している。

   また、「営業秘密保護規定」第5条第2項は「経営活動に関係する創意、管理、販売、財務、計画、サンプル、顧客情報、データ等は経営情報に含まれる」とし、顧客情報には名称、住所、連絡先のほか、取引の習慣、意向、内容等が含まれると規定している。

   以上を踏まえると、以下のような場合には、通常「秘密性」が認められる。
   (1) 詳細な顧客情報:単なる名称・連絡先にとどまらず、取引習慣、意向、内容、価格条件、支払方法、特別要求等を含み、同業者に広く知られておらず、容易に入手できない場合——「営業秘密保護規定」第5条第3項
   (2) 公知の要素を組合せた新情報:公知の要素を特定の選択、組み合わせ、パラメータ、プロセス等の方法によって全体的な計画・方案として形成し、整理・改良・加工を経て新しい情報を作り出した場合、その全体が関連分野の関係者に広く知られておらず、容易に入手できない場合——「営業秘密保護規定」第6条第3項
   (3) 取得に相当なコストを要する技術情報:時間・資金および知的労力を要して取得されたものであり、市販製品の観察または単純な分解・測定等によっては直接取得することができないもの——「営業秘密保護規定」第6条第2項第2号
   (4) 中間成果や失敗データ:生産経営活動の過程において形成された中間的成果、または失敗した実験データや技術方案も、公衆に知られていない限り、なお秘密性を有し得る——「営業秘密保護規定」第7条第2項

   一方、以下の場合では、通常「秘密性」があるとは見なされない。
   (1) 一般常識または業界慣行:当該情報が当該分野における一般的知識または業界慣行に属する場合——「営業秘密保護規定」第6条第2項(一)
   (2) 市販製品の観察により直接取得可能な場合:当該情報が製品の寸法、構造、材料、部品の単純な組合せ等に関する内容にすぎず、当該分野の関係者が市販製品を観察すれば直接取得できる場合——「営業秘密保護規定」第6条第2項
   (3) 既に公開されている情報:当該情報が公刊物その他の媒体により既に公開されている場合、または公開の報告会・展示会等を通じて公表されている場合、あるいは当該分野の関係者がその他の公開ルートから取得可能である場合——「営業秘密保護規定」第6条第2項

   2. 営業秘密の認定その二:価値性

   「価値性」とは、「不正競争防止法」にいう「商業的価値を有する……技術情報、経営情報等の商業情報」を意味する。2017年改正以前は、営業秘密の認定要件の一つとして「権利者に経済的利益をもたらし、かつ実用性を有すること」が求められていた。しかし、一定の商業情報は必ずしも直ちに現実の経済的利益に転化するものではなく(すなわち実用性を有しない場合がある)、これを保護対象から除外すれば、企業の研究開発意欲を損なうおそれがある。このため、当該要件はその後の立法により修正された。

   「営業秘密保護規定」第7条によれば、「商業的価値を有するとは、当該商業情報が現実的または潜在的な価値を有し、権利者に対して資産の増加、営業収入または利益の増加、ユーザー数の増加、コストの低減、研究開発期間の短縮、取引機会の増加、商業信用または商品評価の向上等の商業上の利益または競争優位をもたらし得ることをいう。生産経営活動の過程で形成された中間的成果や失敗した実験データ、技術方案等についても、第1項の要件を満たす場合には、商業的価値を有する」とされている。これらの規定の積極的意義は、現実的な商業価値のみならず潜在的な商業価値も明確に認める点にあり、さらに、中間的成果や失敗した技術方案であっても、一定の要件を満たす場合には保護対象とする点にある。

   「営業秘密保護規定」を加味すると、以下のような場合には、通常「価値性」があると認められる。
   (1) 直接的に経済的利益をもたらす情報:技術成果が製品化され収益を生む場合、または経営情報が取引を成立させ契約収入をもたらす場合
   (2) コスト削減・効率向上に資する情報:新製品で生産能力を著しく向上させ、エネルギー消費や投資を削減し、保守コストを低減する場合、または経営情報が顧客獲得コストを引き下げ、交渉期間を短縮する場合
   (3) 競争優位をもたらす情報:権利者が市場競争において取引機会を獲得し、顧客関係を強化し、市場シェアを拡大することに資する情報
   (4) 権利者の投入コストにより形成された情報:企業の経営活動や事業開拓の過程において、人・時間・資金を投入して徐々に形成された顧客情報または技術情報——「営業秘密保護規定」第7条第1項
   (5) 潜在的価値または負の価値を有する情報:損失の回避、試行錯誤によるコストの低減、研究開発期間の短縮に資する情報(失敗した実験データを含む)であって、権利者または利用者のコスト削減やリスク回避に寄与するものは、価値性を有する——「営業秘密保護規定」第7条第2項

   一方、以下のような場合では、通常「価値性」は認められない。
   (1) 基礎的情報または公開された取得容易な情報にすぎない場合:顧客の名称、住所、電話番号のみを列挙したもの、または業界において公開ルートから一般に取得可能な情報であって、取引習慣や価格受容度等の深度ある内容を含まないもの——この種の情報は「営業秘密保護規定」第7条にいう商業上の利益または競争優位を権利者にもたらすものではない
   (2) 一般的な業界話術や常識的内容:話術が業界で慣用されている表現にとどまり、差別化がなく、取引機会や競争優位をもたらすことを立証できない場合——業界慣行は通常、公衆に知られている範疇に属し、独立した商業価値を有し難い
   (3) 経営活動との明確な関連性を欠く情報:内部規程や分配案等にすぎず、経済的リターンや競争優位の創出を立証できない場合——「営業秘密保護規定」第7条
   (4) 全体として公衆に知られている情報:一般常識または業界慣行に属するもの、既に公開されているもの、または公開ルートから取得可能な情報については、原則として価値性は認められない——秘密性は価値性の前提であり、公開情報は通常、競争優位としての価値を有しない

   3. 営業秘密の認定その三:秘匿性

   「秘匿性」とは、「不正競争防止法」にいう「権利者が相応の秘密保持措置を講じていること」を意味する。「秘密性」が営業秘密の客観的存在状態であり、「価値性」がその保護を正当化する内在的動因であるのに対し、「秘匿性」は、権利者の主観的意思を客観的な法的事実へと転化させる中核的要件であり、営業秘密が法的保護を受けるための不可欠な前提である。

   「営業秘密保護規定」第9条第1項は、「本規定にいう権利者が相応の秘密保持措置を講じるとは、営業秘密の漏洩を防止するため、営業秘密およびその媒体の性質、営業秘密の商業的価値等の要素に応じて講じられる合理的な秘密保持措置を採用しているこという」と規定している。

   「営業秘密保護規定」を加味すると、以下のような場合には、通常「秘匿性」が認められる。
   (1) 秘密保持契約を締結または契約上で守秘義務を明確化:従業員や取引先との間で秘密保持契約を締結する、または労働契約・業務提携契約において守秘義務を明確に定めている場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(一)
   (2) 規定・研修・書面通知で秘密保持要求を提示:定款、従業員ハンドブック、研修、書面通知等により、営業秘密に接触・取得し得る従業員、サプライヤー、顧客、来訪者等に対して守秘義務を課している場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(二)
   (3) 物理的隔離と施設管理:秘密に関する工場、作業場、研究室、オフィス等の生産経営場所で、来訪者の立入制限または区分管理を行っている場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(三)
   (4) 媒体に対する表示・分類・隔離・暗号化・封印等の措置:標識付与、分類管理、隔離、暗号化、封印、アクセス可能者の範囲制限等により、営業秘密およびその媒体を区分管理している場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(五)
   (5) 情報システムおよび設備に対する技術的管理措置:営業秘密に接触・取得し得るコンピュータ、ネットワーク機器、記憶装置等について、使用・アクセス・保存・複製の禁止または制限を行い、リモートワークや越境協働等において、権限の階層化、データのマスキング、操作ログの記録等の技術的秘密保持措置を講じている場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(四)(六)
   (6) 退職時の引継ぎおよび継続的守秘義務:退職従業員に対し、接触・取得した営業秘密およびその媒体の登録、返還、削除、廃棄を求め、引き続き守秘義務を負わせている場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(七)
(7) 派生的守秘義務:明示的な合意がなくとも、契約の性質、取引慣行、商業道徳および権利者による明確な秘密保持要求に基づき、守秘義務が認められる場合——「営業秘密保護規定」第12条(三)(四)

   一方、以下の場合では、通常「秘匿性」は認められない。
   (1) 抽象的な書面条項のみで、具体的対応・実行・閉ループの証拠が欠如している場合:労働契約や規定に「会社情報を秘密とする」と概括的に記載しているだけで、秘密情報の範囲・媒体・権限の境界が明示されず、実地管理、研修、表示、承認、ログなどの実行証拠が存在しない場合。暗号化、権限設定、承認記録の痕跡がなく、退職時の引継ぎ・返還・削除台帳が存在せず、社内チャットやメールで秘密資料が自由に流通している場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(一)(八)
   (2) アカウントの貸与、権限超過付与、共有アクセス:データ・システム権限を有する主/子アカウントを非権限者に提供、または外注・委託チームに対して守秘義務や権限制限を設けていない場合——「営業秘密保護規定」第9条第2項(六)
   (3) 事後対策で先行の欠陥を補えない場合:すでに媒体が流出、権限が失控し、その後に契約締結、警告ラベルを貼付しても、侵害発生前に秘密保持措置が講じられていたことを遡及的に証明し難い場合——「営業秘密保護規定」第9条(五)
   (4) 公知または取得可能な情報を「秘密」とする場合:顧客名簿が名称・電話等の公開入手可能な情報または業界の常識的情報のみである場合は、たとえ秘密保持措置を講じていても、情報自体が秘密性を欠くため、秘匿性は認められない——秘密性と秘匿性は相互に関連し、情報自体に秘密性がなければ、保護措置の有無にかかわらず秘匿性は成立しない。

   まとめると、営業秘密の認定には「秘密性」「価値性」「秘匿性」の三つの法定構成要件を同時に満たす必要がある。「不正競争防止法」は基本的定義としての原則規定を示し、今回の「営業秘密保護規定」により、営業秘密の認定方法についてより詳細かつ具体的な制度的整備が行われた。企業が営業秘密保護体制を構築する際には、上述の「三要件」を起点とし、秘密情報のポイントを明確化し、階層的な管理措置を整備し、完全かつ一連の証拠を保存することが求められる。こうした準備により、紛争発生時に司法機関や行政機関からの有効な保護を得ることが可能となる。必要に応じて、法務や技術の専門家の助言を得ることを推奨する。

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