定年再雇用は労働関係?それとも労務関係?
2025. 12. 25
定年再雇用は労働関係?それとも労務関係?

Q:定年再雇用は労働関係?それとも労務関係?
A:結論として、定年再雇用は、今後、労働関係と労務関係の間に位置する特別な雇用関係ということになるだろう。そのため、企業は雇用リスクを軽減するために、より精細化された管理を行い、法的義務を明確にする必要がある。
そもそも定年雇用とは、労働者が定年退職した後、以前の使用者またはその他の事業体にて再雇用されることを意味する。多くの定年退職者は豊富な経験を有し、企業にとって得難い人材資源である。そのため、定年再雇用はすでに一般的な雇用形態となっている。しかし、再雇用者と企業との関係は、一体どのようなものなのだろうか?
まず、労働関係と労務関係の概念を明確にしておく必要がある。労働関係は、「労働法」「労働契約法」などの法令の規制を受ける。労働者と使用者の間には従属関係があり、労働者は使用者の支配下におかれ、それに応じて法律は労働者を優先的に保護している。それは、社会保険、最低賃金、労働時間、休息休暇、労働災害補償など多岐にわたっている。一方、労務関係は、対等な民事主体間の関係であり、「労働法」などによる特別な保護の対象にはならない。報酬、勤務時間、その他の条件は双方が自由に決めることができると一般的に認識されている。
2020年に公布された「最高人民法院による労働紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(一)」(以下「司法解釈一」という)では、「使用者と当該使用者が採用し、すでに養老保険待遇を法により享受しているか、または定年退職金を受給している人員との間に雇用紛争が発生し、訴訟が提起された場合、人民法院はこれを労務関係として取り扱わなければならない」と規定していた。しかし、2025年8月1日に公布された「最高人民法院による労働紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(二)」(以下「司法解釈二」という、2025年9月1日に正式施行)では、2020年に公布された「司法解釈一」の上述規定を廃止した。すなわち、定年再雇用に係る紛争はもはや一律に労務関係として扱うものではなくなった。
これは、定年再雇用を一律に労働関係として扱うことを意味するものなのだろうか?「司法解釈二」ではこれ以上の回答を示していないが、別途、既に施行されている規定や近々施行される規定と併せて分析してみることができる。
「国務院による法定定年年齢の段階的な延長に関する弁法」の第6条第1項では、「使用者が法定定年年齢を超えた労働者を雇用する場合、労働者が享受すべき労働報酬、休息休暇、労働安全と衛生、労災補償などの基本的な権利と利益を確実に保障しなければならない」と規定している。
さらに、2025年7月31日に人力資源社会保障部が公表した「年齢超過労働者の基本権益保障に関する暫定規定」の意見募集稿(以下「意見募集稿」という)では、「年齢超過労働者」(即ち一般的にいう再雇用者)という概念を導入した。この意見募集稿を通して、労働関係と労務関係のバランスをどのように図ろうとしているのかという国家の考え方を伺え知ることができる。意見募集稿では、最低賃金、残業休暇、労災保険などに関して、既に労働関係が確立している正規従業員と同様に、年齢超過労働者も管理されるべきであると指摘している。さらに、報酬、休息休暇、労働安全衛生、労災保険に関して生じる紛争については、「中華人民共和国労働紛争調停仲裁法」の規定に基づいて処理されるものとしている。これは、年齢超過労働者との間で上記のような事由から生じる紛争は労働紛争として扱われ、年齢超過労働者は労働仲裁を申し立てることができることを意味する。
この意見募集稿はまだ正式な規定として公布されていないが、2025年12月17日、最高人民法院は「年齢超過労働者の雇用に関する紛争」を労働紛争の訴訟事由として正式に追加した。これは、意見募集稿を補完するものと捉えることができ、今後、再雇用者の管理、特に報酬や休息休暇といった労働者の基本的権利に該当する事項については労働関係を参照して処理することを示唆している。ここでもまた、労働法関連の法令に従って相応の強制性基準(8時間労働制、残業時間制限、最低賃金基準、労災待遇など)に対応するよう使用者に求めている。明示的に規定されていないその他の事項については、引き続き労務関係として自由契約で定めることができる。これは、企業の管理に対して更に高いレベルの要求を提起していることになる。したがって、企業は、既存の再雇用者や定年退職年齢に近い従業員の状況を積極的にセルフチェックし、意見募集稿の規定を踏まえて事前に雇用契約を設計しておくとともに、余力があれば、再雇用者の管理に関する具体的な社内規程を策定し、コンプライアンス管理を強化し、リスクの低減を図っておくことを提言する。

