教育分野で100%外資を解禁:外資はどう中国展開すべきか?
2025. 12. 11
教育分野で100%外資を解禁:外資はどう中国展開すべきか?

弁護士 于佳佳
Q:教育分野で100%外資を解禁:外資はどう中国展開すべきか?
A:中国では経済の構造転換や産業の高度化に伴い、質の高い人材育成の需要が高まっている。サービス業の対外開放と自由貿易港の整備も、教育分野に外資が入り込む条件を整えるものとなっている。こうした状況を背景に、長年続いてきた外資系教育機関への規制は、徐々に緩和されつつある。
規制緩和の第一歩は「営利目的の非学歴制の職業技能訓練」を外資に開放することで始まった。これまで、「中外合作学校設立条例」第62条により、外国の教育機関や個人が中国国内で中国人を対象とする教育機関を単独で設立することは禁止されていた。しかし2017年12月、上海自由貿易試験区で中国初の外資100%出資(香港・マカオ・台湾法人による100%出資)による職業訓練機関となるPwCビジネススキルトレーニング(上海)有限公司が設立され、先鞭をつけた。営利目的での事業展開が可能となり、外資系企業の参入意欲が向上した1。2022年には北京市も「営利性外商投資職業技能訓練機関管理弁法」を発表した。これを受けて、デロイト・ビジネススキルトレーニング(北京)有限公司(Deloitte Business Skill Training (Beijing) Co., Ltd.、台湾・香港・マカオ法人による100%出資)が2021年7月29日に設立登記され、北京市で最初に認可された外資系訓練機関となった。2025年1月、国務院は北京市に対し、「中外合作学校設立条例」第62条を「外資100%による職業訓練機関の設立を認める」との内容に改正することを正式に承認した。
その後、中外合弁に限定してきた高等教育機関への規制も緩和の兆しを見せている。2024年版の外資参入ネガティブリストでは、就学前教育、普通高校、高等教育機関の設立は中外合作に限るとし、中国側が主導権を持つ(学長や主要な管理職は中国籍、理事会や董事会の中国側メンバーが半数以上)という規制が依然として存在する。しかし、海南自由貿易港では画期的な規制緩和が実現した。2023年11月24日に可決され、2024年1月1日から施行された「海南自由貿易港陵水黎安国際教育イノベーション試験区条例」では「海外の一流大学・職業学校は試験区内で理工系・農業・医学分野の学校を単独で設立することができる。また、海外の一流企業による試験区内での独資での学校設立も法に基づき認める」ことが初めて明確に規定された。2023年3月22日には教育部と海南省政府が共同で「境外高等教育機関の海南自由貿易港における学校設立暫定規定」を公布した。この規定では、「ここでいう境外高等教育機関には、外国ならびに香港・マカオ・台湾地域に設立された一流大学および職業教育機関が含まれる」とし、「本規定は、境外高等教育機関による海南自由貿易港での理工系・農業・医学分野の学校設立、または独立法人格を有するキャンパス設置に適用する」ことを一層明確化した。この新制度の下、2023年5月には外資100%のBiUH教育発展有限公司が設立され、続いて6月14日にはビーレフェルト応用科学大学海南校(Hainan Bielefeld University of Applied Sciences)が登記を完了させた。同年9月に開校し、中国初の外資による独立運営大学として大きな注目を集めている。
このように中国の教育分野の対外開放は明確な戦略下で進められている。まず営利目的の職業訓練分野から規制緩和をスタートさせ、次に海南自由貿易港において理工系、農業、医学分野の高等教育を開放するという段階的なアプローチを採用してきた。この段階的な開放は、教育の主権を確保しながら、外資企業に明確な投資機会を提供するものとなっている。特に理工系、農業、医学分野に重点を置いた開放政策は、中国のイノベーション駆動型発展戦略と緊密に連動しており、これらの分野での人材育成の国際化を促進すると同時に、重点産業の発展に必要な人材を供給する基盤の強化にもつながるものである。
こうした新政策を受けて、外資企業からの中国教育市場への投資に関する問い合わせが急増しており、教育分野での対外開放の積極的な効果が着実に表れ始めている。
1. この画期的な出来事を皮切りに、2020年には江蘇省南京エリアと山東省青島エリアの自由貿易試験区でも、外資系職業訓練機関の設立に関する試行規定が施行された。

