他社に知財侵害されていることを発表すべきか?
2025. 12. 2
他社に知財侵害されていることを発表すべきか?

Q:最近、複数の企業が当社製品の模倣品を販売している可能性があることを発見した。販売代理店および消費者への注意喚起を目的に、当社の公式ウェブサイトで公開文書を発表し、模倣品販売の疑いのある企業名を列挙することを検討している。このような措置は適切なのか、リスクはあるのか?
A:自社の知的財産権を守り、模倣品・侵害行為の存在を世間に周知させること自体は正当性がある。しかし、侵害嫌疑者の具体的な情報をこうした文書で公表する場合は、慎重に対応することが望ましい。
その理由として、このような情報の公開は、権利者が関係する人や企業に対して侵害行為の可能性を指摘することを意味し、それは公表された主体に対する不利益な情報および評価となることによる。中国の「民法典」では、企業の営業上の信用は法律によって保護される民事権利であると明確に規定しており、さらに「反不正競争法」では、「事業者は、虚偽情報又は誤導的情報を捏造、流布し、又は他人に捏造、流布を指示して、他の事業者の名誉、商品信用を侵害してはならない」と規定している。仮に対象とした主体の侵害行為を立証できるほどの十分な証拠がなく、例えば、かかるブランドの商品の販売を行っているオンライン店舗を発見して同店舗が当該ブランドの公式販売店ではないという理由だけで、模倣品であると確認できる前に同店舗には権利侵害の疑いがあると主張した場合、上記の法律規定で定められた不正競争行為に該当する可能性がある。また、中国法では、権利侵害者と訴えられた側が「非権利侵害確認の訴訟」を提起して、その行為が侵害に該当しないことを裁判所に確認させることが可能であり、権利侵害を訴えた側に対して逆に損害賠償責任を追及することもできるようになっている。
従って、我々は次の通り提案する。
- 侵害行為を行っている疑いのある主体の身元を確認する必要がある。例えば、オンライン店舗で模倣品を購入した場合ならば、当該店舗の電子商取引プラットフォーム上での身份情報、出荷時の発送人情報、請求書の発行者情報などを総合的に確認して真の権利侵害の疑いのある主体の身元を特定し、誤認によるリスクを回避する。
- 確実な侵害行為の証拠を把握する必要がある。例えば、模倣品を購入していてかつ購入過程の証拠を保存している、または行政通報して行政機関が模倣品を押収している(関連証拠は必ず原本で確認すること。コピーを入手しただけで証拠扱いにして安直に公に発信する行為は避けるよう注意すべきである)。
- 公表する具体的な表現は、正確である必要がある。例えば、権利侵害の証拠を把握してはいるが、対象とする主体を侵害者と確定する発効済みの判決文または行政処分決定がない場合には「権利侵害」という文言は使用しない。
さらに、情報を公開する前に管轄行政機関に通報し、行政機関が対象主体の行為の性質を確認した後に公開を行えば、リスクは大幅に低減される。

