最近、受益所有者の要届出通達があったが、どんな状況か?
2025. 10. 29
最近、受益所有者の要届出通達があったが、どんな状況か?

Q:最近、当社は口座開設銀行から受益所有者を届け出る必要があると知らせられたが、受益所有者とは何でしょうか?
A:銀行は、2024年4月に中国人民銀行と市場監督管理総局が共同で発表した「受益所有者情報管理弁法」に基づき、市場監督管理局のシステム内で受益所有者を届け出るよう貴社に要求したものと考えられます。
実際、昔からこの要求は「市場主体登記管理条例」第9条で言及されており、その条項では下記の通り規定しています。
「市場主体の次の各号に掲げる事項は、登記機関に届出を行わなければならない。
……(8) 会社、パートナー企業等の市場主体の受益所有者に関する情報、……」
しかし、同条例及びその実施弁法には、受益所有者をどのように記入して届け出るべきかについて具体的な規定がなされていなかったため、2024年4月に中国人民銀行と市場監督管理総局が共同で上記の情報管理弁法を発表しました。
当該情報管理弁法の規定によると、受益所有者とは、届出主体を最終的に保有または実質的支配し、または届出主体の最終収益を享有する主体を指し、かつ自然人として届け出る必要があります。
Q:受益所有者が誰なのかはどのように確定すべきでしょうか?
A:これは状況によって確定方法が異なります。
1) 一般会社の場合:
直接的または間接的に会社の25%以上の持分・株式を保有する自然人、または25%未満ではあるが、実際に享受する受益権、議決権が25%以上に達する自然人、あるいは、前2項に合致しないが、協議・約定等の方法を通じて実際に単独または共同で届出主体に対して支配を行うことができる自然人。
上記方法を通じてかかる自然人を確定することができない場合には、例えば、会社の株主が上場会社であり、かつ直接的・間接的に25%以上の持分・株式あるいは受益権を保有する自然人を見出すことができない場合(例えば、株主が比較的分散している場合)、届出主体の日常経営の管理責任者を受益所有者として記入・届出することができます。
2) 外国会社の在中国代表機構の場合:
上記1)の規定により当該外国会社の受益所有者として確定された自然人または当該在中国代表機構の責任者を、受益所有者として記入・届出します。
Q:当社が外商独資企業である場合には、海外の親会社の株主まで遡及する必要がありますか?
A:厳格に規定に従うと、海外の親会社が自然人によって支配される会社であれば、確かに海外親会社の株主まで遡及することが可能です。
しかし、筆者の理解としては、現在の実務においては、外資企業の場合は、特に海外親会社が上場企業である場合には、実際に経営管理を担当する董事、高級幹部を受益所有者としてまずは届け出ることが考えられます(銀行側の指導意見を参考にしてください)。
Q:なぜいまになってこのような要求をしているのでしょうか?
A:「受益所有者情報管理弁法」は2024年4月に公布、施行されており、過去に設立された会社については、遅くとも2025年11月1日までに受益所有者情報の届出を行うようにと規定していました。その原因で、貴社が現在このような要求をされたと考えると理解しやすいでしょう。
Q:もしも期限までに届出を完了しなかったら、何か不利益なことがありますか?
A:期限までに届出を完了できなかった場合、期限付きの是正を命じられます。それでも期限通りの是正ができなければ、5万元以下の過料を科される恐れがあります。また、2025年10月に中国人民銀行が発表した「金融機関顧客の受益所有者の識別管理弁法」(意見募集稿)を参考にすると、今後、銀行などの金融機関は、顧客の受益所有者情報の確認、識別、管理を、マネーロンダリングなどの法律違反行為を防止する重要な措置と位置付けています。したがって、届出を完了しなかった場合、処罰を受けなくても、銀行業務に支障をきたす恐れがあると考えられます(例えば、届出未完了により受益所有者情報が確認できないという理由で銀行が関連業務の受理を拒否するなど)。

