上海新介護休暇制度:戸籍制限なし、申請条件及び企業対応策

2025. 10. 21

上海新介護休暇制度:戸籍制限なし、申請条件及び企業対応策

Q:上海で新たに導入される「介護休暇」制度は、上海戸籍を持つ高齢者のみに適用されるのか?適用条件は?

   A:改正後の「上海市高齢者権益保障条例」は2025年11月1日より施行される。新たに追加された第24条で介護者の休暇について次のように規定されている。

   「高齢者が病気により入院治療を受けている期間、その扶養者は、年間累計で5営業日を超えない範囲で看護休暇を取得することができる。扶養者が国家により一組の夫婦に一人の子どもの出産を奨励していた期間(1979年から2015年、一人っ子政策期間)に生まれた一人っ子である場合は、年間累計で7営業日を超えない範囲で看護休暇を取得することができる。看護休暇期間中の賃金は、本人の通常出勤時の賃金を支給するものとする。」したがって、今回の上海市の条例では「高齢者」に戸籍の限定を設けていない。

   また、この条例の上位法である「中華人民共和国高齢者権益保障法」においても、高齢者の戸籍に関する限定は設けていない。このことから、「高齢者」の適用範囲は上海戸籍に限定されず、より広く上海市に居住する高齢者を含むと解される。

   本条例が特に重視しているのは高齢者に対する「介護・看護」であり、その前提となる条件は「病気による入院治療中」である。したがって、従業員が申請できるかどうかは、主に父母が入院しているかどうかによって判断され、父母の戸籍所在地は問われない。他の省市では、河北省や重慶市のように「二級以上の介護」が必要とされる場合があり、湖北省や寧夏回族自治区では「失能」または「自立した生活が不能」も対象に含めている。

   注意すべき点として、条例によれば「看護休暇」を申請できるのは高齢者の「扶養者」としている点である。「中華人民共和国民法典」第26条によると、成年子女は父母を扶養し、扶助し、保護する義務を負う。「中華人民共和国高齢者権益保障法」第14条および「上海市高齢者権益保障条例」第18条では、扶養者とは、主に高齢者の子女およびその他法定の扶養義務者を指し、扶養者の配偶者は扶養義務の履行を補助すべきとされている。したがって、扶養者とは主に高齢者の成年子女(婚生子女・非婚生子女・養子女・扶養関係にある継子女など)を指し、特定の場合には孫や外孫も該当する可能性がある。一方、嫁(息子の妻)や婿(娘の夫)には法的に義父母に対する直接の扶養義務はなく、「扶養者を補助する者」にとどまる。そのため、従業員の配偶者(嫁・婿)は自分の名義で義父母のために看護休暇を申請することはできない。ただし、山東省など一部の地域政策では、養子女や継子女を含むほか、子女が死亡したり生活自立不能の場合には、子女の配偶者にもこの休暇の取得を認めている。

   さらに、休暇日数については、上海市では一人っ子が年間7営業日、非一人っ子が年間5営業日とされている。全国的に見ると、一人っ子の看護休暇は10日から20日とされる地域が多く、河南省、西安市、天津市などでは20日と定められている。非一人っ子の場合も7日から10日とされているため、上海市の規定は全国的に見ても下限に位置し、他地域に比べて慎重な設定となっている。

   この新制度に対応するため、企業は速やかに「就業規則」を改訂し、「看護休暇」に関する専用の章を設ける、あるいは別途制度や細則を公布することが推奨される。そこでは、申請条件(父母の入院治療、一人っ子の認定基準など)、提出書類(親子関係を証明できる資料、入院証明書など)、申請手続き、休暇日数および賃金の取扱基準を明確に定めることで、制度施行後の混乱を防ぎ、従業員の権益保護と企業の法令遵守を両立させることができる。
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