労働契約を協議により解除する表現を標準化

2025. 9. 29

労働契約を協議により解除する表現を標準化

Q:会社は、無期雇用契約を締結した従業員との合意に基づき、労働契約を解除する場合、従業員が失業給付金を受けられるように、「労働契約解除書」の退職理由欄に「労働契約の解除は労働者本人の意思によるものではない」と記載しようとしており、このような条項の表現は会社にリスクを生じさせる可能性があるのでしょうか。

   A:会社にリスクを生じさせる可能性があると考えられる。従業員が将来の紛争において、会社が職位を廃止したにもかかわらず、配置転換を行わなかったと主張する恐れを免れるために、「労働者本人の意思によるものではない」や「甲の職位が廃止された」などの表現を解除理由とするのを避けることを提案する。「中国人民共和国労働契約法」第36条に基づき、「使用者は労働者と協議による合意の上で、労働契約を解除することができる。」。従って、「甲が提出し、乙の同意を経て、両当事者が協議のうえ、合意して労働契約を解除すると明確に表現さえすれば」、今まで通り裁判所には両当事者が協議による解除であると認められ、違法な解除には該当しない。例えば、広東南方碱業株式有限公司が胡氏との労働紛争事件(2017年・粤01民終第11631号):当該会社が鉱区の閉鎖に伴い職位を廃止し、従業員に対して解除通知を発した。裁判所は最終的に、会社の都合(職位の廃止)による解除の申出であったとしても、従業員が当該通知を受領し、かつ同意の意思を示した以上、両当事者が、即ち、協議に基づく合意による解除が成立したものと認められ、違法な解除に該当しないと判断した。

   同時に、会社は、両当事者が協議の上、合意に達したことを裏付ける関連証拠を保存しておくことが望ましい。さもなければ、裁判所において違法な解除であると判断される恐れがある。最高法(2011)民提字第32号案において、万氏は1988年に日広電子工場に入職し、2007年に無固定期限の労働契約(月額賃金4700元)を締結した。ところが2007年12月に、電子工場が一方的に契約を解除し、補償金として12ヵ月分の賃金(56400元)を支払ったが、両当事者の合意に達したことを裏付ける証拠を保存していなかった。万氏はこれを不服として仲裁を申立て、補償金の差額及び追加補償を請求し、仲裁委員会は万氏の主張を支持した。最高裁判所は、電子工場が万氏と労働契約の解除について協議の上、合意に達したことを証明できないため、その一方的な解除行為は違法であり、更に、万氏は仲裁を申立て、使用者に対し経済補償金の差額及び追加経済補償金の支払を請求したことは、両当事者相互間における権利義務関係において、合意が成立していないことを示すものである。故に、本件において使用者の申出に基づき両当事者が協議の上、合意して労働契約を解除したと見なすことはできないと判断した。

   従って、一方では解除契約書において具体的な解除の背景を明記することを避け、他方では協議の過程に関する証拠を保存しておくことにより、会社は不要な法的紛争をより確実に保護されることとなる。
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