平日の残業時間で代休を申請することは可能なのか?

2025. 8. 28

平日の残業時間で代休を申請することは可能なのか?

Q:会社は業務周期の影響で、数ヶ月は特に繁忙であり、何か月かは閑散であることから、平時の残業時間を貯めておき、閑散期にまとめて休暇を取ることが出来るよう会社に要望する社員の声が意見箱に寄せられた。会社としてはこれにより残業代の削減も期待できるが、実際には実行可能なのか?

   A:周知の如く、中国の法律は残業に対する規定を以下の三種類に分けている。
  • 平日の残業:賃金の150%を支払い、代休可能という規定はない。
  • 休日の残業:優先的に代休・振替休日を手配し、これを手配できない場合に賃金の200%を支払う。
  • 法定祭日休暇の残業:賃金の300%を支払い、代休可能という規定はない。
   即ち、平時の残業時間を貯めておいて閑散期に振り替えて使用すること自体、法律規定上の根拠がない。

   双方が協議により合意して実行するか否かでも、厳格に言えばリスクが残る。なぜなら、この約定自体が法律規定と相反するからである。労働法の分野は一般的な民事法の分野とは異なり、労使双方の身分・地位・交渉能力の差異を鑑みると、双方に残された協議の余地が極めて小さい所以である。多くの場合、労働法律法規(関連規定自体において双方が自ら約定することを明確に容認している場合は除く。たとえば競業避止補償金は正常出勤賃金の30%を下回ってはならないが、上限は双方が協議して決定できる)と矛盾しないことを前提としている。仮に労働者が後から翻意したり、あるいは法執行部門による検査が実施されたら、その協議の効力が認められる可能性は極めて低い。

   なお、説明しなければならないことは、労働仲裁や訴訟の過程において、信義の原則に基づき、一部の仲裁委員や裁判所は「既に自ら希望して代休を取得した労働者が事後に翻意して残業代を主張するのは使用者に対して不公正である」として支持しない判断を示したケースもある。しかし、このような判断は、紛争処理の中でのみ見られ、かつ明確な法律根拠を欠くため、不確実性が存在する。いったん法執行検査に遭遇すれば、おそらくこの点は考慮されない。実際には使用者にとってはリスクが大きい。

   対策としては、別の角度より考慮することが可能である。例えば、業務の繁忙・閑散の程度を組み合わせ、「総合労働時間制」(四半期・半期・年単位を周期とする)を申請する、または、当該類いの社員に対しては、平時の残業時間を月次で集計し、今後どの期間に休むか選択させ、その上、当該休暇を無給休暇として設定することができる。
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