従業員が私用休暇を申請した場合、会社は不承認できるか?

2025. 6. 18

従業員が私用休暇を申請した場合、会社は不承認できるか?

Q:従業員が私用休暇を申請した場合、会社は承認の可否を独自に決定できるか?極端にいえば、私用休暇の付与が法定義務ではなければ、会社は恣意的に不承認できるか?

   A:この問題は単純かつ機械的に理解すべきものではない。一般的に言って、会社は私用休暇の承認権を有するため、従業員の休暇申請の事由と業務の必要性に基づき、承認の可否決定を独自に行うことが出来る。なお、特定の状況下において、会社が私用休暇を不承認とすることは法的リスクをもたらしかねない。

   年次有給休暇、産休、病休などの法定休暇と異なり、私用休暇は通常、従業員が個人もしくは家族の私用を処理するために、会社の承認を得て労働義務を一時停止する無給休暇を指し、その承認権限、期間、手続きは主に会社が法に基づいて制定した規則規程制度によって規定される。私用休暇の決定権は会社にあるが、これは会社が従業員のいかなる休暇申請をも恣意的に拒否できることを意味するものではない。

   例えば、2024年12月、最高人民法院が主導している人民法院案例庫が発表した中で登録されている事例(登録番号:2024-07-2-490-004)では、末期がんの父親の介護を理由に従業員が私用休暇を申請したことに対し、会社は不承認とし、さらに、当該従業員が自己判断で会社を休んだ後、当該会社は無断欠勤を理由に、同従業員を解雇した事案があった。人民法院は、会社が管理制度の運用に当たって、「人間本位主義の発展理念が反映されておらず、社会主義の中核的価値観に合致せず、伝統的な中華孝道文化にも反し、情理にもとり、合理性がない」と判断し、会社が労働契約を違法に解除したと判決を下した。この事例から、従業員の私用休暇申請に対する合理的な判断基準は、会社の自主的な雇用管理権を尊重することを前提としつつ、「人間本位主義」の理念を兼ね備え、友善・寛容・合理的な原則を遵守する必要があることが見て取れる。従業員が私用休暇を申請した時には、取り分け、休暇申請の事由が基本的人倫、社会的・家庭的責任または法的義務に関わる場合、会社は承認権を慎重に行使する必要があり、恣意的に拒否すべきではない。人民法院は従業員の私用休暇申請行為が会社の規則規程制度に違反するか否かを審査し認定するにあたり、従業員の休暇申請事由の正当性・必要性、休暇期間の合理性、会社の承認手続き及び承認結果の合法性・合理性などを総合的に考慮するものである。

   同じ様なことは他にもあり、2025年5月、上海市宝山区人民法院、宝山区総工会(宝山区の労働組合総連合)、宝山区人力資源社会保障局が共同で発表した十大典型事例においても、同類の事案がある。それは、妊娠初期の女性従業員が妊娠による吐き気で体調不良となり4日間の私用休暇を申請し、個人のウィーチャットで上司に連絡したものの、上司は明確な回答を行わず、会社を休んだ後に、女性従業員が規律に違反したことを理由に解雇された事例である。人民法院は審理を経て、会社は従業員の休暇申請に対して審査・承認する権利を有するが、この権利の行使は恣意的なものではなく、社会主義の中核的価値観に従い、適切かつ合理的に運用しなければならないとの認識を示した。私用休暇を取得する前に、原則として会社の承認を得るべきではあるが、従業員が会社の承認を得ずに職場を離れ、もしくは欠勤することを無断欠勤と認定できるか否かについては、一律に論じることはできず、従業員の私用休暇申請の背景・理由、休暇手続の履行状況、会社の休暇承認権限の行使状況、並びに無断欠勤行為の定義などを鑑み、総合的に判断する必要がある。労働契約の解除は、会社が行使し得る最も厳しい懲戒手段なので、特に慎重な運用が求められる。

   上記を要約すると、会社は従業員の私用休暇に対する審査承認管理は、本質的には会社の雇用管理権の行使に属するが、当該経営自主権を行使するにあたっては、具体的な状況に基づき慎重な判断が求められる。中国における現行の労働法体系には、私用休暇に関する具体的な規定は設けられていないが、会社の雇用管理におけるコンプライアンスの観点より出発し、社内において私用休暇制度を構築するなどの手段を通じて、私用休暇を管理することができる。私用休暇は従業員の直接的な権益に関わるものなので、休暇に関する規則規程制度は、「労働契約法」第4条第2項の規定に基づき、民主的手続を経て制定することに注意をしなければならない。

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