トランプ氏の「相互関税」政策は「不可抗力」に該当するのか?
2025. 4. 15
トランプ氏の「相互関税」政策は「不可抗力」に該当するのか?

Q:米国のトランプ政府が実施する「相互関税」政策は、中国法の契約履行における「不可抗力」に該当するのか?
A:このほど、米国のトランプ政府は、すべての国に対して10%の「基準関稅」を課するとともに、一部の国に対しては個別により高い「相互関税」を課すると発表した。その中で、中国商品への追加関税を持続的に引き上げて、本稿執筆時点までで既に合計125%に達した。今回の関稅政策の調整は、国際貿易実務において当事者の契約の継続履行に大きな圧力を与える可能性がある。この状況においては、当事者は「相互関税」政策が「不可抗力」に該当すると主張して、責任を負わないことを要求することができるか?
中国の民法第180条では、不可抗力により民事義務を履行できない場合には、民事責任を負わないと規定している。法律が別途規定している場合には、その規定に従う。不可抗力とは、予期が不可能で、回避できず、且つ克服できない客観的な状況を言う。一般的な不可抗力は主に地震、台風などの自然災害、または徴収、徴用などの政府行為、および疫病、ストライキ、騒動、戦争などの緊急事件である。
不可抗力の本質は事件が突発的で、反抗できず、契約の履行を客観的に不可能な状態に陥れる。関稅引上げの多くは、国家が政治、経済などの要因に基づいて政策調整を行なうため、完全に予兆がないわけではない(例えば、トランプ氏の前大統領任期内の政策や、今回の大統領選挙期間の発言や行動など)。当事者が国際情勢等に注目することで予知でき、且つ一般的には契約履行コストが増大するだけで、契約を完全に履行できなくなるわけではない。それは不可抗力により契約が履行できない核心的な要旨に合致しないため、一般的に不可抗力と判断することは難しい。
したがって、今回、米国のトランプ政府が最近実施した「相互関税」政策は、中国法上の「不可抗力」に当該しないと考える傾向がある。
ただし、これには「事情変更」ルールに適用できる可能性がある。
中国「民法典」第533条には以下を規定している。「契約の成立後、契約の基礎条件に当事者が契約締結時に予見することができず、商業的リスクに属さない重大な変化が生じ、契約の履行が当事者の一方にとって明らかに不公平である場合は、不利な影響を受ける当事者は相手方と新たに協議することができる。合理的な期間内に協議が合意に達しない場合は、当事者は人民法院又は仲裁機関に契約の変更又は解除を請求することができる。人民法院又は仲裁機関は、事件の実際の状況を踏まえて、公平原則に基づき契約を変更又は解除しなければならない。」
事情変更における適用の核心は契約の基礎条件に重大な変化が起き、この変化は、契約締結時に当事者が予期できない、且つその原因が当事者自身の過失や通常の商業リスクに起因しておらず、契約を履行し続けることは一方に対して明らかに不公平になることである。関稅の引上げが締結した契約を履行する前に発生した場合には、契約締結時に当事者は確かに予測できず、その原因が双方の過失によることではなく、且つ大幅に引き上げられた関税率が契約締結時に期待した利益バランスを大きく損ない、継続して履行することが一方に大きな経済的負担を与える場合には、状況変更の構成要件に適合する可能性がある。しかし、最終的な判定は依然として人民法院または仲裁機関が公平の原則を堅持し、事件の具体的な事実、証拠および関連する法律規定などの多面的な要素を総合的に決定する必要がある。
また、この問題の対応処理は契約自体の約定も配慮する必要があり、その中には法律の適用(例えば、「国際商品売買契約に関する国連条約」の適用)や管轄地(例えば、海外での仲裁)など関連する内容が含まれる。企業は優先して契約条項に基づいて相手方と協議を行い解決することを提案する。必要に応じて専門弁護士の援助を求めることができる。