躍進する外資独資医療機関!中国市場で新たな展開

2025. 3. 28

躍進する外資独資医療機関!中国市場で新たな展開

ダン・リーグ法律事務所
日系企業法律サービスセンター
ヘルスケアチーム
于佳佳 弁護士

   中国の医療分野における対外開放政策は、2024年9月に大きな転換期を迎えました。商務部、国家衛生健康委員会、国家薬品監督管理局が共同で「医療分野における対外開放試行業務に関する通知」を発表し、北京、天津、上海、南京、蘇州、福州、広州、深セン、海南島全域で外資100%出資の医療機関の設立が可能となりました(ただし、中医分野と公立病院の買収は対象外)。さらに同年11月末には、国家衛生健康委員会を含む4つの政府機関が「独資病院分野における対外開放試行業務方案」を公表し、具体的な実施方針を示しました。

   これまで中国では、外資系医療機関の設立には厳しい制限が設けられていました。外資は必ず中国企業との合弁か合作の形を取る必要があり、出資比率も70%までしか認められていませんでしたが、今回の新政策により、特定地域に限り外資単独での医療機関設立が可能となりました。

   この9つの地域が選ばれた理由には、主に以下のポイントがあります。まず、外国人居住者が多く、質の高い医療サービスへの需要が高い地域であること。次に、中外合弁病院の運営実績が豊富で、管理体制が整っていること。そして、医療インフラが充実しており、中国の外資受け入れ総額の45%以上を占める重要な経済圏であることです。

   政策発表後、各地域は積極的な取り組みを開始して、わずか半年の間に、具体的な実施案の策定や外資独資医療機関の誘致において、目覚ましい進展が見られています。

   広東省では、2024年11月8日、シンガポールのペレニアル・ホールディングス(Perennial Holding Private Limited)が広州市白雲区政府と協力協定を締結し、第1期投資として10億元を投じ、100%外資による「ペレニアル国際病院」の新設を決定し、2025年の開院を目指しています。2024年12月16日、広東省は外資独資病院の受け入れに関する試行計画(「広東省における外資独資病院分野の対外開放パイロット事業実施案(試行)」)を公表しました。

   深センでは、2024年12月6日の深セン国際投資誘致大会において、シンガポールの緑葉医療グループ(Luye Medical Group)が市の衛生健康委員会と提携し、外資独資病院の設立計画を発表しました。

   天津市では、同じくシンガポールのペレニアル・ホールディングスが運営する天津鵬瑞利病院が、2024年12月16日に中国初の外資100%出資による三級総合病院として医療機関開業許可を取得し、2025年2月26日から診療を始めました。これに先立ち天津市は2024年12月3日、外資独資病院の受け入れに向けた行政機関の役割分担を定めた実施要綱と、許認可手続きの詳細を定めた細則(「天津市独資病院分野における対外開放試行業務分担」と「天津市外資独資病院審査承認実施細則」)を公表しました。

   上海市では、2024年12月26日に「上海市における外資独資病院の受け入れ拡大に関する実施方針」を発表しました。ロンドンに本社を置くスワイヤーグループ(Swire Group)が全額出資する上海デルタ病院が2025年3月14日、上海市衛生健康委員会から外資独資の医療機関開業許可を取得し、上海市では2番目の外資100%出資の医療機関となりました。なお、中国で最初の外資独資病院となった日本の永遠幸医療グループによる上海永遠幸婦人科病院は、2016年5月から既に診療を行っています。

   福州市は2025年2月20日、外資独資病院の受け入れに関する実施方針(「福州市独資病院分野における対外開放試行業務方案」)を発表しました。福州国際医療総合実験区は、国の支援を受けて設立された医療政策の実験区域として、外資独資病院の誘致を積極的に進めています。この取り組みは、福建省と福州市の医療水準の向上や医療サービスの充実を図る上で重要な役割を果たすとともに、福州における医療分野の対外開放の重要な基盤となっています。

   海南省では、省衛生健康委員会が2025年1月26日、ウェブサイト上で「海南省における外資独資病院の受け入れに関するQ&A」を公開し、外資独資病院設立に対する優遇措置の詳細を明らかにしました。主な支援策として、楽城先行区での外資独資病院向けワンストップサービスによる効率的な参入手続きの実施や、外国人医療従事者の海外資格を認定する制度の整備を進めています。また、各市県の衛生健康委員会、楽城先行区管理局、楽城医薬監督管理局、商務局などの関係部門による定期的な連絡会議を開催し、個々の外資独資病院の状況に応じて「一案件一協議」「一病院一施策」という柔軟な対応を行うことで、パイロット事業における課題解決に取り組んでいます。

   その他の地域では、北京市で米国資本系の香港慧心会社が全額出資して設立した北京嘉会国際病院が、北京市初の香港法人独資による三級総合病院として運営されています。また南京市では2024年9月30日、南京吾同歯科病院が医療機関開業許可を取得し、南京市で初めての台湾法人資本100%出資による医療機関となりました。

   中国国内市場の外資医療機関への開放は、優れた発展環境を提供しています。外資医療機関の中国進出は、高水準の医療環境と医療サービスの構築、生物医薬先端分野における国際的な医療資源の導入、多様な医療サービス体制の確立に向けた基盤作りとなり、生物医薬研究開発の全面的な推進に寄与するものと期待されています。
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