バイオ医薬品の製造革新へ新たな一歩
2024. 12. 31
バイオ医薬品の製造革新へ新たな一歩

バイオ医薬品産業の質の高い発展に向けた国家戦略の重要な一環として、国の医薬品監督管理局の主導により、バイオ医薬品の製造工程における分段階配置のパイロット事業が2024年10月21日より開始されることとなった。従来の全工程一貫製造方式と異なり、この製造工程の分段階配置では、バイオ医薬品の製造プロセスを複数の段階に分け、それぞれの工程において最適な環境下で実施することが可能となる。
上海市は、製造工程の分段階配置に関するパイロット事業の先駆的な取り組みを開始した。2024年3月11日、上海市医薬品監督管理局は「ビジネス環境の最適化および医薬品規制分野における改革推進に関する諸施策」を公布し、バイオ医薬品の製造工程の分段階配置について具体的な方針を示した。本施策では、製造技術が成熟し、臨床現場から切迫したニーズのあるバイオ医薬品、もしくは製造工程や製造設備に特別な要件が必要となる革新的バイオ医薬品を対象として、パイロット事業を推進することが提言された。
さらに2024年10月21日には国の医薬品監督管理局が「バイオ医薬品の製造工程における分段階配置のパイロット事業に関する方案」を公布するに至った。本方案では、革新的バイオ医薬品および臨床現場から切迫したニーズのあるバイオ医薬品を中心に、多価ワクチン、抗体類バイオ医薬品、抗体薬物複合体、GLP-1類バイオ医薬品、そしてインスリン類バイオ医薬品が対象品目として指定された。

例えば、抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)は、バイオ技術により製造される抗体に化学薬品を結合させた新しいタイプのバイオ医薬品であり、その構造や製造工程において特別な特徴を有している。従来の全工程一貫製造方式では、設備を揃えること、専門的な人材を育てること、そして異なる製造環境を管理することなど、多くの課題があった。このADCの構造特徴および製造工程における独自性を踏まえ、国の医薬品監督管理局審査センター(Center for Drug Evaluation, NMPA)は2024年11月7日、「ADCの製造工程における分段階配置のパイロット事業に係る申請資料の技術的要件」を公表した。この要件は、製造工程を分けて行うパイロット事業における、ADCの製造販売承認申請ならびに承認後の変更申請を行う際に必要となるものである。
新しい製造方式の導入により、より効率的かつ国際競争力を有するバイオ医薬品製造システムの構築が期待される。