改正「会社法」施行後、現在会社が実施している「従業員奨励福利基金」はどう対応すべきなのか
2024. 11. 3
改正「会社法」施行後、現在会社が実施している「従業員奨励福利基金」はどう対応すべきなのか

Q:当社は外資企業で、従来から「従業員奨励福利基金」の計上を行って来ており、且つ定款にも関連規定があるが、「外商投資法」の5年移行期間が間もなく満了することにより、今後この基金の計上を継続する必要はあるのか?
A:まず、これはよくある誤解で明確にする必要がある。「外商投資法」施行以来の5年移行期間とは、当初「三資企業法」(即ち、「中外合弁経営企業法」、「中外合作経営企業法」及び「外資企業法」)に基づいて設立された外商投資企業を対象としており、その組織形式及び組織機構が「会社法」と一致していない場合、「会社法」の要件を満たす調整を行わなければならない期間のことである。例えば、会社の最高権力機関が従来の董事会であった場合、それを株主(株主が1名しかいない場合)または株主会(株主が2名以上いる場合)に変更する必要がある。しかし、その中で、三項基金(準備基金、従業員奨励福利基金、企業発展基金)の計上の継続要否については規定されていない。実際、中外合弁・合作企業であれば、「外商投資法実施条例」により、「既存の外商投資企業の組織形式・組織機構等が法により調整された後、元の合弁・合作各当事者が契約で約定した持分または権益譲渡方法・収益分配方法・余剰財産分配方法等を引続き約定に従って運用することができる」。即ち、中外株主が従業員奨励福利基金の計上を継続することに合意しても法に反するものではない。そして、従来の外商独資企業についても、同様で「外商投資法」施行後、継続して計上してはならないという強制的な規定はない。
もちろん、会社が今後当該基金の計上を終了すると決定しても合法である。
但し、実務の角度から言えば、筆者は企業が当該基金の計上を終了することを推奨する。その主な理由は次の通りである。
1. 当該基金の用途は単一である。即ち、「従業員の非経常的な奨励、従業員住宅の購入・建設・修繕などの集団福利厚生の補助」に用いるしかない。実務では住宅購入、従業員住宅の修繕などの用途は現実的には既に実行性が備わっておらず、非経常的な奨励についても、正常に発生する従業員の福利厚生(例えば、従業員チームビルディング費用)などの用途と重なっている。よって、当該基金の実際の使い道はほぼ無いとも言える。
2. 当該基金は税引き後利益から引き出されるが、性質上企業財産でも株主財産でもなく、全従業員の共益性財産に該当する。よって、外商投資企業が清算する場合、当該基金の処理が非常に面倒になる。株主に分配することも、経済補償金を相殺することもできず、厳格に規定に基づいて従業員を引き受けた事業者に残さなければならない(実際にはこのような類いの事業者は存在しない)。企業の清算に不必要な財務問題を増やすだけである。
Q:今後計上を終了するには何か注意すべきことはあるのか?
A:主に次の二点がある。
第一に、一般的に言えば、基金の計上は通常定款に規定されている。したがって、計上を終了するには、定款の変更手続きを行わなければならない。具体的には、株主会の決議批准を得て定款変更に関する届出手続き等を行うことになる。
第二に、当該基金の用途は「従業員の非経常的な奨励、従業員住宅の購入・建設・修繕などの集団福利厚生の補助」である。また、財政部の「外商投資企業の「企業会計制度」執行に関係する問題に係る規定」でも、「未払い福利費用」勘定科目は「未払い賃金」勘定科目から組み入れられたかかる内容を計算するほか、外商投資企業が規定に基づいて税引き後利益から取り出した従業員奨励・福利基金及びその使用のみを計算する。残りの福利費用は発生した当期に直接当期損益に算入する、と明確にしている。即ち、当該基金は税引き後利益から取り出されているが、実質上は従業員全体の集団福利に属している。この点を前提に、「労働契約法」第4条及び改正後の「会社法」第17条の規定に基づき、当該基金並びに関連制度の廃止も従業員の切実な利益にかかわる重要な課題であり、「全従業員または従業員代表大会の討議を経る」、「労働組合または従業員代表と平等に協議する」という民主的プロセスを履行しなければならない。
Q:当該基金は計上を終了した場合、引き続き使用してもいいのか。何か注意すべきことはあるのか?
A:当該基金は計上を終了した後、残高があれば、それを使用してもいい。使用にあたっての注意点は、主に次の二点がある。
第一に、当該基金は税引き後利益から積立てられているが、その用途に制限がある(上記参照)ので、残高の使用も同制限を受けており、会社の資本準備金に転換したり、株主に分配したり、企業損失の補填に使用することはできない。
第二に、従業員奨励福利基金があり、同時に従業員の賃金総額に基づいて「福利費用」を引き出している場合、奨励福利基金については、企業の税引き後利益の中から引き出した基金として、当年の支出が賃金総額の14%を超えても、納税調整にはかかわらないことに注意する必要がある。一方、従業員の賃金総額から直接計上した福利費用である場合、規定に基づき賃金総額の14%を超過してはならず、超過部分は企業所得税納税の税引き前支出原価として控除してはならない。当該部分は専門的な財務・税務処理に関連しているので、会社の財務担当者や会計士にさらに相談し、確認することを推奨する。