定年退職した元従業員が在職中に受けた労災の認定を申請できますか?
2024. 6. 13
定年退職した元従業員が在職中に受けた労災の認定を申請できますか?

Q:定年退職した元従業員から在職中に労災を受けたとの申し出があったが、労災認定の申請はまだ可能でしょうか?
A:事故の発生日から1 年以内の場合は申請可能です。「労災保険条例」によれば、使用者が規定通りに労災認定を申請していない場合、労災を受けた従業員は傷害を受けた事故が発生した日から1年以内に、使用者の所在地の社会保険行政部門に直接労災認定を申請することができます。
但し、会社には2つのリスクがあります。
- 事故が発生した時に会社への報告がなく、関連する証拠が適時に収集、保管されていないため、労災の有無及び労災による傷害の確認にあたって会社は十分な証拠を提供できず、最終的な認定結果に不確実性がもたらされます。
- 「労災保険条例」によれば、従業員が事故による傷害を受けた場合、使用者は事故の発生日から30日以内(申請により延長可能)に、所在地の社会保険行政部門に労災認定を申請しなければなりません。使用者が規定された期限内に労災認定を申請していない場合、その間の規定に合致する労災待遇などの関連費用は当該使用者が負担しなければなりません。本件の場合、労災認定の申請が上記の期限を超えた可能性が高く、最終的に労災と認定された場合、労災認定の申請までに発生した、本来労災保険基金が従業員に支払う費用(従業員が労災の治療のために発生した診療費、薬剤費、入院費、食事補助費、地域外受診のために発生した交通費、食事代、宿泊料などの費用を含む)を、会社が自ら負担して従業員に支払う必要があります。
よって、会社としては、リスク回避のために内部教育と管理を強化する必要があります。ご参考まで下記の通り提案致します。
- 従業員が一旦事故を受けた時、傷害の度合に係わらず、速やかに会社の管理部門に報告し、管理部門が労災認定の申請要否を慎重に判断する制度を整備すること。
- 定年退職者のために定年退職手続きを行う際に、未報告の事故の有無を本人に確認し、確認書に署名してもらう措置を講じること。