「0元」で持分を譲渡できる?リスク回避策を解説
2024. 2. 21
「0元」で持分を譲渡できる?リスク回避策を解説

Q:「0元」で持分を譲渡できる?
A:「0元」で持分を譲渡するリスクを検討する前に、まずその有効性、すなわち当該行為が法的に有効かどうかを明確にする必要がある。現在、「中国の国有企業が資産を譲渡する際には鑑定価格を参考しなければならない」といった特殊な主体に対する制限を除き、現行法には持分価格の制限に関する規定はない。従って、株主は持分の譲渡価格を主体的に設定する権利を有し、持分の譲渡価格は当事者の合意により決定することができるので、「0元」での持分譲渡は有効と認められる。
実務上、「0元」の譲渡を合意した持分譲渡契約の多くにおいては、「贈与」という表現を使用せず、その旨を表さないようにすることが一般的である。また、持分の性格から、譲受人は譲渡対価を支払わないものの、株主の義務(会社への資源導入、労務提供、登録資本金の払い込み等の承諾)を依然として負担しなければならない。従って、司法実務上、「0元」での持分譲渡はほとんどの場合、裁判所から贈与と認められず、譲渡人は無償贈与の法律関係に基づく取消権を享受することができない(ここでいう取消権は「民法典」で定める贈与契約に関する下記の規定で示すものを指す。「贈与者は、贈与財産の権利が移転する前に贈与を取り消すことができる。ただし、公正証書による贈与契約や、法律上取り消すことができないと規定している災害援助、貧困救済、障害者援助などの公共の福祉や道義的義務を伴う贈与契約を除く。」)
持分の「0元」処分における法的リスク回避に関する特別注意点:
1. 持分の譲渡人であれば、対象持分を「0円」で譲渡することに同意する場合には、自らの利益の観点から、契約が贈与契約であることを明示するように「持分贈与契約」と名付け、また当該譲渡が「贈与・受贈」の形でなされることを契約書に明示することを推奨する。この目的は、対象持分を処分する行為の性質が贈与であることを確認し、持分処分の対価が「無償」であることを明確にすることにより、贈与としての法律関係を成立させて、譲渡人が前述した贈与における法律関係に基づく取消権を取得できるようにすることにある。また、贈与に特定の付随義務が存在する場合には、法律上または契約上の事由が生じた場合に、贈与者が取消権を行使して自己の利益を守れるように、関連する事由を明らかにしておく必要がある。一方、贈与者は受贈者と、実際の持分移転の発生要件についても明確に合意しておく必要がある。さもなければ、実際の持分移転が発生した時点で、取消権が滅失してしまう。
2. 持分の譲受人であれば、上述のように、「0元」での持分譲渡契約が贈与関係として認められる可能性は低いが、贈与関係と認められるリスクを回避するために、当該処分が贈与ではなく譲渡であることを明確にするために、予め両当事者で「持分譲渡契約」と明記した契約を締結しておくことを勧める。譲受人の利益の観点から、持分譲渡の価格を「0元」という表現は極力使用せず、両当事者は例えば「1元」あるいは「0.1元」などの相対的に低い価格で合意し、契約の趣旨を「有償譲渡・譲受」であることを明示するよう推奨する。また、他の持分譲渡の対価がある場合には、関連する条項を契約書に箇条書きで記載すべきである。どうしても「0元」で譲渡しなければならない場合には、契約書に、贈与契約ではなく持分譲渡契約であること、両当事者に贈与の意思がないことを明記することを推奨する。譲受人は対価を支払わなくても特定の義務またはリスクを請け負うことになるので、贈与関係と認められる可能性を回避しておく必要がある。さらに、決済の日付、履行の方法、違約責任についても、さらに詳しく記載しておく必要がある。