汚職摘発下の医薬品企業のコンプライアンス対応

2023. 8. 30

汚職摘発下の医薬品企業のコンプライアンス対応

Q:反腐敗運動で汚職摘発が行われているこんにち、医薬品企業は、買付、販売においてどのようにコンプライアンス対応を行えばよいか?

   A:反腐敗は中国が一貫して重視している課題で、近年、医薬業界の汚職問題への注目度と対応措置は、公表される文書の数が年々増加し、関連措置が細分化され続けていることが示すように、絶え間なくアップグレートし続けている。
   今年5月に国家衛生健康委員会など14部門は共同で「2023年医薬品買付販売分野と医療サービスにおける不正を是正するための業務ポイント」を印刷、配布し、医薬品の販売過程においてさまざまな形式で行われている賄賂を重点的に取り締ることを明らかにした。7月には、衛生健康委員会をはじめとする10部門が業務会議を開き、全国で医薬品分野の腐敗問題を集中的な取り締まる業務を1年間展開する手配をした。最近、各病院の医師や医薬品企業の役員が続々と調査されていることからも、医薬品業界の汚職摘発に対する国の強い態度と確固たる決意が示めされている。
   医薬品の販売分野は従来から腐敗の多発地帯と見られてきた。医薬品企業は、現在の汚職撲滅への高圧的な情勢下で、コンプライアンス管理システムを健全化し、法令、政策を遵守して、研究開発を強化して市場競争における優位性を獲得すべき時期に来ている。汚職に抵触しない関連企業にとっても、医薬品の販売活動におけるコンプライアンス対応に重点を置く機会となっている。

一、病院と医薬品企業との「組織対組織」関係を強化する
   伝統的な医薬品の販売モデルでは、病院、医師、医薬品企業の間に直接的な利益関連があり、MRが医師に経済的なキックバックを提供することによって医薬品の販売を促してきた。医師がキックバックを得て、医薬品企業と担当するMRが経済的な利益を得る構造が、腐敗問題を発生させてきた。従って、医薬品の販売過程でのMRと医師のプライベートなコミュニケーションを避け、MRと病院との間で「組織対組織」の販売を行わなければならない。近年、医薬品業界ではリスクヘッジのために、医薬品企業や病院と独立した第三者機関が登場し、CSO契約販売組織がよく見受けられる。CSO(Contract Sales Organization)モデルは、医薬品企業と病院の医師との間に第三者機関をMRとして参画させ、医薬品企業と病院、医師との直接的な接触を遮断するもので、医薬品企業のコンプライアンス経営に一定程度有益である。ただし、最近の医薬品分野における高圧的な反腐敗の嵐が続く中では、CSOモデルによる「組織対組織」関係の実行が着実に強化されなければならず、第三者機関のMRも病院に対して「組織対組織」で連携しなければならない。伝統的なモデルであれCSOモデルであれ、MRは医師個人ではなく病院という組織と接触し、取引の公正性と透明性を保証しなければならない。

二、販売アウトソーシングモデルにおける第三者機関への制約を強化する
   医薬品企業が販売アウトソーシングモデルを採用する場合には、第三者機関にコンプライアンスリスクを警鐘し、事前の監督管理をしっかり行うとともに、締結する提携協議書の中で第三者機関への制約を強化し、第三者機関のMRの行動規範と行動指導、及び不定期の抜取り検査の実施などに関する要求を追加しておき、また、提携協議書の中で違約金などの違約賠償条項を定めて、第三者機関による潜在的なリスクから生じる医薬品企業への悪影響を回避することが必要である。
   まとめていえば、医薬品業界は人々の健康と密接にかかわり、国際社会でも注目している分野、テーマ、ヨーロッパ、アフリカ、南米、アジア太平洋などの地域ではすでに多くの医薬品業界の反腐敗コンプライアンスガイドラインが公布されている。現在、医薬品企業のコンプライアンス強化は世界的なトレンドとなっている。今回、中国で実施されている反腐敗運動も世界の医薬品業界の発展トレンドに順応した国際社会と連携した措置だとも考えられる。中国では近年、医薬品業界の全分野、全チェーンに対して制度的な制約が増加しており、医薬品に関連する腐敗への打撃力が絶えず強化されている。これに伴い、医薬品企業は発展の核心を医薬品の研究開発、イノベーションに向けるべきであることを示唆している。中国に進出している外資系医薬品企業にとっても、医薬品の開発イノベーションと、海外医薬品の中国への導入に注力して、これによって生じる市場での優位性を核心競争力として、コンプライアンス政策を遵守して、イノベーションを推進し、医薬品の研究開発と販売における普及宣伝に強化することが求められている。
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