高温手当に関する5つの法律問題

2023. 7. 20

高温手当に関する5つの法律問題

   世界気象機関(WMO)によると、2023年は「エルニーニョ」現象により世界の気温が急上昇する可能性がある。実際、夏休みに入ってから中国各地では猛暑が続いている。こうした環境下でも、労働者が仕事を堅持するには、企業は労働保護の強化に注意しなければならない。

   中国の法律によると、労働者が福祉を享受する権利をよりよく保障するために、高温環境下で働く労働者には適切な労働手当を支給する必要がある。以下には、高温手当に関連する5つの法律問題を簡潔に紹介し、企業の参考に供したい。

1、高温手当支給の法的根拠と基準は?
国家レベルの規定:
   2012年に、国家安全生産監督管理総局、衛生部、人力資源・社会保障部、中華全国総工会が共同で「熱中症予防・冷却対策管理弁法」(以下「弁法」という)を交付している。この「弁法」が現在の中国における高温作業、猛暑下作業の労働保護業務に関する主な根拠となっている。
   「弁法」では、使用者は労働者を35℃以上の高温天候下で屋外の露天作業に従事させ、または、職場の温度を33℃以下に下げる有効な措置を講じることができない場合には、労働者に高温手当を支給し、賃金総額に含めなくてはならないと規定している。しかし、高温手当の基準については全国一律の規定がなく、地域により異なっている。現在、31省の高温手当の基準額は100元から300元の範囲に集中している。
地方レベルの規定:
   上記の「熱中症予防・冷却対策管理弁法」によると、高温手当の支給基準は、省級の人力資源社会保障行政部門が関連部門と共同で制定し、社会経済の発展状況に応じて適宜調整されるとしている。高温手当の支給期間を見ると、各地で支給時期は一致せず、多くの地域では6月から支給されるが、5月から支給される地域もある。支給方法に関しても様々で、日割りで支給される地域もあれば、月割りで支給される地域もあり、日割りと月割りを選択できる地域もある。支給期間は最短で3ヶ月(北京市など5省市)、最長で7ヶ月(海南省のみ)、多くの地域では4ヶ月(上海市など12省市)、5ヶ月(広東省など3省市)となっている。
上海市の基準:
   上海市人力資源・社会保障局(以下「上海人社局」という)が公布した「本市における夏季高温手当基準の調整に関する通知」(沪人社規[2019]19号)によると、企業は毎年6月から9月までの期間において労働者に露天勤務を手配し、有効な措置を講じて職場の温度を33℃以下に下げることができない場合には、当該労働者に対して夏季高温手当を支払わなければならない。夏季手当の基準額は月額300元とする。

2、高温手当の支給対象と支給条件は?
   「熱中症予防・冷却対策暫定弁法」によると、使用者が高温手当を支給する対象は「労働者」と規定している。過去の判例から見ると、派遣社員に対しても高温下で働く条件に合致していれば、使用者の社員と同じ労働報酬を付与し、同様の高温手当待遇を与えなければならない。
   高温手当を支給する条件は、35℃以上の高温の天候において、①屋外の露天作業に従事する場合と、②有効な措置を講じて職場の温度を33℃以下に下げることができない場合の2つである。実際には、屋外と屋内とで同時に働く労働者がいることには議論の余地があるだろう。上海人社局の意見によると、労働者の職場の性質が確定しにくい特殊な状況においては、使用者は実際の状況を考慮し、賃金集団協議などの民主的な管理プロセスを通じて、合理的に支給方法を策定する必要があるとしている。

3、高温手当は賃金か?最低賃金には高温手当が含まれるか?
   「熱中症予防・冷却対策管理弁法」によると、労働者に支給される高温手当は賃金総額に含めると規定している。従って、高温手当の性質は賃金に属し、、福利ではなく、国が定めた手当項目となる。条件を満たす労働者に対して、高温手当を支払うことは使用者の法定義務であり、使用者は賃金明細書に高温手当の具体的な項目と金額を明記しなければならない。
   「最低賃金規則」によると、労働者が正常な労働を提供する状況において、使用者が労働者に支払う賃金は、労働時間の延長に対する賃金や、中勤、夜勤、高温、低温、坑内、有毒、有害などの特殊な労働環境・条件に対する手当を控除した後に、現地の最低賃金基準を下回ってはならないと定めている。

4、高温手当を支払わないときの法的責任は?
   使用者が高温手当を支払わない場合、労働者は現地の労働監督部門に申し立てを行うか、現地の労働人事争議仲裁部門に仲裁を申請することができる。使用者が規定通りに高温手当を支給していないことが確かな場合には、労働者の賃金を控除または理由なく滞納したと見なされる。労働保障監察機関は使用者に対して法に基づき期限内の支払いを命じ、期限を過ぎても支払わない場合には賠償金の追加支払いを命じることができる。

5、高温作業者に対して高温手当を支給する以外に、企業が注意することは?
   「熱中症予防・冷却対策管理弁法」によると、使用者は高温作業、高温天候下での作業に従事する労働者に対して熱中症を予防するための飲料及び必要な薬品を提供しなければならず、熱中症予防飲料と薬品の代わりに金銭を支給してはならず、熱中症予防飲料と薬品を高温手当と相殺してはならない。
   また、「熱中症予防・冷却対策管理弁法」では、労働者が高温作業または高温天候下での作業により熱中症を引き起こし、職業病と診断された場合には、労災保険待遇を受けると規定している。
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