信用失墜被執行者と高消費制限者の相違点

2023. 6. 28

信用失墜被執行者と高消費制限者の相違点

   日常生活の中で、被執行者に執行できる財産がない場合、「信用失墜被執行者として登録する」、「高消費制限令を申請する」という措置が講じられることをよく耳にする。この2つの措置は実際には似たような効果をもたらすので混同されやすい。そのために、本文では両者の主な相違点について整理して紹介しておきたい。

法的根拠の相違点
   被執行者を信用失墜被執行者として登録する行為は、「中華人民共和国民事訴訟法」(以下「民事訴訟法」という)をベースにし、「最高人民法院による信用失墜被執行者リスト情報の公表に関する若干の規定」で当該措置の具体的な運用を明確にしている。その中には当該措置に関する適用条件、適用プロセス、是正メカニズムなどの具体的な内容が盛り込まれている。
同様に、高消費の制限令も、「民事訴訟法」をベースにし、「最高人民法院による被執行者の高消費及び関連消費の制限に関する若干の規定」で当該措置の適用条件、制限内容、適用プロセスなどの面から高消費制限令の実行に対して具体的な法的根拠を提供している。

制限内容の相違点
   被執行者を信用失墜被執行者として登録する措置の重点は、社会生活の多種多様な面から行動を制限することにより被執行者に信用懲戒的な効果を与えることにある。実務上では、就業、政府調達、入札参加、行政審査、政府支援、融資信用貸付、市場参入、資質認定などの面の制限が含まれる。信用失墜被執行者を「一度の信用失墜で、至る所全ての制限を受ける」状況に陥らせるものである。
   一方、高消費の制限令は、被執行者の消費行為に対する制限に重点を置き、本質的には「基本的な需要を超える不必要な散財行為」に対する制限となっており、主に被執行者に対して特定の交通手段を用いた移動、不動産や自動車の購入、旅行休暇、子供の就学、高額な保険料の支払い、保険・金融商品の購入などの高消費行為を制限するかたちで表れている。

適用対象の相違点   
   被執行者を信用失墜被執行者として登録する措置は、主に「返済能力があるのに敢えて履行しない」被執行者を対象者としている。関連法律の規定により、被執行者を信用失墜執行人として登録するには、被執行者が発効法律文書で確定された義務を履行していないことに加えて、以下のいずれかの条件を満たす必要がある。
(1)履行能力があったにもかかわらず発効法律文書で確定された義務の履行を拒否した場合。
(2)証拠偽造、暴力、脅迫などの方法で執行を妨害、拒否した場合。
(3)虚偽の訴訟、虚偽の仲裁または財産隠匿・移転などの方法で執行を回避した場合。
(4)財産報告制度に違反した場合。
(5)消費制限令に違反した場合。
(6)正当な理由なく和解協議の実行を拒否した場合。
   一方、高消費制限令は、「返済の意思があるが返済できない」被執行者を適用対象とし、被執行者が執行通知書に指定された期日通りに発効法律文書で定められた支払い義務を履行していない場合、その高消費、即ち、生活または経営に必要でない消費を制限することにより、客観的に当該被執行者に支払い義務の早期履行を促す効果を目的としている。被執行者が組織である場合、その組織の法定代表者は、高消費の制限対象となる可能性がある。

執行期限の相違点
   被執行者が信用失墜被執行者として登録された場合の当該措置の有効期間は、信用失墜事由によって区別される。財産報告制度への違反、消費制限令への違反があった場合に、実務上で信用失墜被執行者と指定される期限は、2年以上となっている。被執行者が暴力、脅迫で執行を妨害し、抵抗する情状が深刻であるか、または複数の信用失墜行為を有する場合には、1 ~ 3年延長することができる。ただし、発効した法律文書で確定された義務を信用失墜被執行者が積極的に履行したり、信用失墜行為を自発的に是正したりした場合には、人民法院は信用失墜情報を期日前に削除することができるとしている。
   高消費制限令の期限については、原則として被執行者が債務を完全に履行することができない限り、無期限となる。即ち、以下の4つの条件のいずれかを満たす場合にのみ、高消費制限令が解除される。
(1)被執行者の履行が完了したとき。
(2)被執行者が確実かつ有効な担保を提供したとき。
(3)執行申請者が解除に同意したとき。
(4)差し押さえ、押収、凍結などの措置を取られた財産により発効法律文書で確定された債務を返済するのに十分であるとき。
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