定型約款において「最終解釈権」を定めることができるか?

2023. 6. 9

定型約款において「最終解釈権」を定めることができるか?

Q:定型約款において「最終解釈権」を定めることができるか?

   A:結論から言えば、「最終解釈権」は定型約款で直接定めるべきではない。定めた場合には行政処罰を受けるリスクがある。

   いわゆる「最終解釈権」は、企業の営業活動における文書や、定型契約書、サービス契約という定型約款などのなかによく見られる。契約書の関連説明の最後に「最終解釈権は当社が有する」という書き方が多い。

   最終解釈権に関しては実のところ旧「中華人民共和国契約法」(現「中華人民共和国民法典」契約編。以下、「民法典」契約編)で既に触れている。

   「民法典」第498条では以下の通り規定している。
   定型約款の理解について紛争が発生した場合には、通常の理解に従って解釈しなければならない。定型約款について2種以上の解釈がある場合には、定型約款を提供した片方に不利な解釈をしなければならない。定型約款が非定型約款と一致しない場合には、非定型約款を採用しなければならない。
   一般的に経営者が定型約款で「最終解釈権」を定める目的は、契約条項の意味が不明確で、理解が一致しない場合に、契約が自らに偏るように、自らに有利な解釈をするためである。このような行為は同時に、消費者の利益を圧迫し、侵害することを意味することが多い。上記の「民法典」の条項は実際にこうした解釈方法を明確に禁じるものである。

   定型約款について、「中華人民共和国消費者権益保護法」にも明確な規定がある。同法の26条は、以下の通り規定している。
   経営者が経営活動において定型約款を使用する場合、商品またはサービスの数量と品質、値段または費用、履行期限と方式、安全注意事項とリスク警告、アフターサービス、民事責任など消費者と重大な利害関係がある内容を顕著な方法で消費者に提示し、かつ、消費者の要求に従って説明しなければならない。
   経営者は、定型約款、通知、声明、店頭告示などの方式で、消費者の権利を排除または制限し、経営者の責任を軽減または免除し、消費者の責任を重くするなどの消費者に対する不公平、不合理な規定をしてはならず、定型約款を利用し、技術手段を利用して取引を強制してはならない。
   定型約款、通知、声明、店頭告示などが前項に記載された内容を含む場合、その内容は無効とする。

   上記の禁止条項のほか、法律法規でも相応の違反状況に対して責任を設定している。
   2010年に公布・施行された「契約違反行為への監督処理弁法」(以下、2010年「弁法」)での規定は以下の通り。
   経営者と消費者が定型約款を用いて契約を締結した場合、経営者は定型約款の中で消費者が定型約款を解釈する権利を排除してはならない。違反した場合、工商行政管理機関はその情状の軽重を踏まえ、それぞれ警告を与え、違法所得額の3倍以下、最高3万元を超えない過料を科す。違法所得がない場合には1万元以下の過料を科す。
   また、「消費者権益侵害行為への処罰弁法」でも、経営者に対して経営者が一方的に解釈権または最終解釈権を享受することを規定してはならない」と規定している。処罰の度合いは2010年「弁法」と同じである。

   13年の時を経て、このほど、市場監督管理総局より2010年「弁法」に代わる「契約行政監督管理弁法」が発表され、新弁法は2023年7月1日から施行する。その中で「最終解釈権」についての表記も明確に言及され、相応の法的責任が与えられている。
   第8条:
   経営者は消費者との契約締結において、定型約款などの方式を利用して消費者の責任を重くし、消費者の権利を排除または制限する規定をしてはならない。定型約款には次の内容を含んではならない。……、(7)経営者が一方的に解釈権又は最終解釈権を享有する。
   第18条:
   経営者が本弁法第5条、第6条第1項、第7条、第8条、第9条、第12条の規定に違反し、法律、行政法規に規定がある場合、その規定に従う。規定がない場合には、県レベル以上の市場監督管理部門は期限付きの是正を命じ、警告を与え、かつ、10万元以下の過料を科すことができる。 

   公開された情報を検索したところ、本執筆時点までに「最終解釈権」を違法事実とする行政処罰は2023年で既に百件以上発生している。数の多い地域には河北、浙江、広東、四川などの省市である。

   注意を喚起すべき点としては、上記の規定は経営者に対してより高い要求を提示しているが、定型約款の存在を全面的に否定するものではないということである。経営者としては、依然として信義則に基づいて、定型約款を合理的に使用して適切な契約書を作成することができる。どのような文面にすべきかの判断が難しい場合には、必要に応じて専門家の支援を求めていただきたい。
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