日本企業派遣者の個人所得税について

2023. 3. 4

日本企業派遣者の個人所得税について

Q: 日本企業派遣者の個人所得税はすべて中国で納付するの?

   A:多くの日本企業が中国境内の投資会社や事務所に、長期、短期で社員を派遣している。派遣者の賃金は、現地企業から支給されたり、日本本社から支給されたり、または両方から支給されたり、様々なケースがある。賃金以外にもボーナスや役職手当、株式配当等が支給されることもあり、個人所得税の納付問題はさらに複雑さを増している。では、どのように確定しているのだろうか。改めて整理してみよう。

   「個人所得税法」では納税義務者を居住納税者と非居住納税者に分け、同時にそれぞれが得た所得が、境内から得た所得か、境外から得た所得か、支払い経路は国内会社からか、国外会社からかなど、更に区分している。

   原則としては、境内所得である以上、中国で所得税を納付する必要がある。また、境外所得についても、中国に住所がなく、かつ居住日数が累計183日未満である場合を除き、境内で納付する必要がある。ここでいう「住所」とは、個人が境内で習慣的に住んでいる場所のことを指す。学習、業務、親族訪問、旅行などの理由で中国国内に居住する国外の個人は、その滞在理由が解消した後に国外に戻って居住する場合には、住所があるとは認定されない。

   上記の原則のほかに、「個人所得税法実施細則」では二つの例外規定が示されている。一つ目は、中国境内に住所がない個人で、中国での居住期間が累計183日を超える年度が連続6年未満の場合には、主管税務機関に届け出ることにより、中国境外を出所とし、中国境外の企業または個人から支払われた所得に対しては、個人所得税の納付を免除できる。二つ目は、中国境内に住所がない個人で、1納税年度内での中国境内滞在期間が90日以内の場合には、中国境外を出所とする所得で、境外の雇用主から支給され、且つ中国境内の機関、場所が負担した部分でなければ、個人所得税の納付を免除できる。

   さらに、個人所得税法の規定のほかに、「非居住者個人及び住所がない居住者個人に関する個人所得税政策についての公告」(税務総局公告2019年第35号文)では、取締役(董事)、監査役および高級管理職に対して特別な規定を設けている。即ち、現地法人の高級管理職は、海外で就業したことで得た所得であっても、境内所得と認定するとしており、これらの規定も、個人所得税の支払いに影響を与える。

   さらに、個人所得税に関連する規定が「日中租税協定」と「個人所得税法」との効力的競合に抵触することを鑑みると、具体的な状況により、個人所得税の支払いも異なり、関連する問題は更に複雑さを増してくる。こうした問題に遭遇した場合には会計士、税理士、弁護士などの専門家に相談し、確認されることをお勧めする。
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