適切な異動の拒否による労働者の無断欠勤

2022. 11. 15

適切な異動の拒否による労働者の無断欠勤

   「中華人民共和国労働契約法」第三十五条は、使用者と労働者が合意しないと労働契約を変更できないと規定している。その立法は自由意志で平等に労働契約を締結、変更する基本原則を提唱することで、使用者が経営管理権の濫用を通じて、労働者の合法的な権益を侵害することを避けるのを目的としているが、労働契約法では、使用者が経営管理のニーズに基づき、労働者の勤務内容を合理的に調整する権利を排除したわけではない。

   煙台市人力資源社会保障局は、労働者が適切な異動を拒否し、新たな職場に出社しないことによる無断欠勤に関する典型的な事例を発表した。事例における王氏は、勤めている会社に数回の異動申請を提出した。会社は異動申請に同意し、王氏に新たな職場を手配し、且調整後の賃金レベルは従来の職場と同一であった。しかし、王氏は新たな職場に不満を抱いているため、ずっと新たな職場に出社しなかった。会社は、王氏が連続して無断欠勤しており、催促を行っても出勤しないことを理由として、双方の約定に基づき、王氏と労働契約を解除した。王氏は仲裁を申し立て、会社に労働契約違法解除の賠償支払いを要求した。仲裁委員会は、王氏の行為が無断欠勤になり、会社による双方の約定に基づく労働契約解除は合法であり、且根拠もあると判断したため、王氏の仲裁請求を却下した。

   本件では、使用者は労働者の申請に応じて異動を手配し、調整前後の勤務内容、労働報酬等の労働条件には不利な変更がないため、合理性と適切性の判断基準に適合し、労働者は使用者による適切な異動に従う必要がある。

   実務上では、使用者は自社の経営ニーズ及び労働者の勤務状況に基づき、自主的に異動を手配する場合がある。「中華人民共和国就業促進法」第八条は「使用者は人力の自主使用権利を有する」と規定しており、使用者が自社の生産経営ニーズに基づき、労働者に対し適切な調整を行うことは労働者使用自主権行使の重要内容であるが、当該権利の行使は関連法律及び政策が定めた枠組み内において、一定の条件と範囲に適合しなければならない。使用者による労働者使用自主権の濫用を防止し、出来る限り労働者の労働権と使用者の使用自主権のバランスをとるために、実務では、異動が適切であるか否かを判断するには、使用者による正常な生産経営の必要性、調整前後の業務内容、労働報酬及び他の労働条件における不利な変更、双方労働契約の約定などの要素を合わせて、必要性、合理性、正当性の判断基準に適合しているか否かを総合的に考慮する必要がある。


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