競業制限契約/条項の違約金額の上限は?

2024. 3. 8

競業制限契約/条項の違約金額の上限は?

Q:競業制限契約/条項の違約金額の上限は?

   A:法律では違約金に明確な上限を定めていない。ただし、約定した違約金の額が過大な場合は、係争中に法院または仲裁機関によって金額が調整される。

   労働契約法第23条は、「守秘義務を負う労働者に対し、使用者は労働契約または秘密保持契約のなかで競業制限条項を労働者と約定することができ、且つ労働契約終了後または解除後の競業制限期間内に月単位で経済補償金を労働者に支払うと約定することができる。労働者は競業制限の約定に違反した場合には、使用者に対して約定に基づき違約金を支払わなければならない」と定めている。競業制限契約または競業制限条項(以下、合わせて「競業制限契約」と総称する)は、同業または競争関係にある他の雇用主への従業員の移動を制限し、営業秘密の保護を実現するものであり、秘密保持契約と並んで営業秘密保護のための一般的な措置となっている。競業制限期間が開始した後に、使用者は労働者に対して競業制限の経済補償金を支払う義務があり、相応に、労働者は競業制限義務に違反した場合に、使用者に対して違約金を支払わなければならない。

   一般に、競業制限の違約金額は、企業と従業員の間の私的自治により設定されるものである。しかし、実際には、両者の地位の不平等や法意識の欠如から、契約で約定する金額は使用者側によって一方的に決定され、労働者側が異議を提起する余地が比較的小さいことが多いため、労働者が「手の届かない違約金」の負担を求められる事例は稀ではない。

   法規定上では、「労働契約法」においては違約金額に制限を定めていないが、競業制限契約も民事契約の一種であるため、「民法典」で定める違約金に関する規定も適用されるとの見解が多い。民法第585条は、「約定した違約金が発生した損害額より低い場合、人民法院又は仲裁機関は、当事者の請求により、これを増額することができる。約定した違約金が発生した損害額より顕著に高い場合、人民法院又は仲裁機関は、当事者の請求により、これを適切に減額することができる」と規定している。

   司法の実務においては、法院や仲裁機関が裁量する競業制限の違約金の調整幅は地域によって異なるものの、当事者の請求により違約金を調整する裁量権を有することは共通認識となっている。一般的には、「民法典」585条で規定する契約当事者の「損失」に加え、関連する営業秘密の価値、営業秘密侵害の可能性、従業員の主観的悪意、新たな雇用主で得られる収入等の要素も参考にして法院や仲裁機関は違約金を調整している。

   競業制限契約において適切な額の違約金を定めることは、労働者に注意喚起し、履行を促すために必要であると我々は考える。しかし、過大な違約金の額を設定すると、労働者との紛争や対立を招きやすくなり、調和のとれた雇用関係の構築に資さないばかりか、実際の裁判においても一層の立証責任が求められ、結局、企業自体に不利益となる。競業制限の違約金の額を具体的に設定する際には、法律専門家に相談することを推奨する。

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