社会保険の損害賠償と追納に時効はあるか?
2026. 2. 3
社会保険の損害賠償と追納に時効はあるか?

Q:会社の社会保険未納や納付不足に対し、従業員が損害賠償または追納を請求する時効期間はどのくらいか?
A:会社が社会保険を未納付または納付不足した場合、民事賠償責任と行政追納責任を負わなければならない。両者には、法的責任の性質が異なり、時効時期も異なる。具体的な違いは以下の通り。
1. 民事賠償責任:時効期間 1年
『最高人民法院による労働争議案件の審理に適用する法律問題に関する解釈(一)』の第1条に「労働者と使用者の間に発生した次の各号に掲げる紛争は労働紛争に該当し、当事者が労働紛争仲裁機関の裁定を不服として、法により訴訟を提起した場合、人民法院はこれを受理しなければならない。……(5)使用者が社会保険手続を行わず、かつ社会保険取扱機関が追納を受け付けられないことにより、労働者が社会保険待遇を享受できないことを理由として、使用者に損害賠償を請求する紛争……」と規定されている。即ち、使用者による社会保険未納により、労働者が年金・医療等の社会保険給付を受けられず、直接的な経済損失(年金差額、自己負担医療費等)を被ったことによる紛争は、労働紛争に該当し、労働者は労働仲裁または訴訟を提起し、使用者に対して損害賠償を請求することができる。
また、時効期間については、『労働争議調解仲裁法』第27条に「労働紛争の仲裁申請の時効期間は一年とする。仲裁の時効期間は、当事者がその権利を侵害されたことを知った時或いは知るべきであった時より起算する」と規定されている。したがって、労働者は権利侵害の事実を知り、または知るべきであった日から1年以内に、労働仲裁または訴訟を提起しなければならない。時効を経過し、かつ使用者が時効の抗弁を提出した場合、労働者の請求は時効経過を理由に棄却されることとなる。
2. 行政上の追納責任:時効制限なし
使用者に過去に未納・未払いした社会保険料の追納を求めることは、行政徴収の範疇に該当し、法的時効の上限は設けられていない。『社会保険法』第63条に基づき、使用者が期限どおりに社会保険料を全額納付していなかった場合、社会保険料を徴収する機関は、期限を定めて納付または追納を命じることができる。この条文には時間的制限が設けられていない。同条文を見れば、未納の事実が存在する限り、社会保険徴収機関は使用者に対して追納を求めることができる。労働者がすでに退職して長期間が経過している場合であっても、労働関係が存在したことを証明する資料(労働契約書、賃金支払記録等)を提出できれば、社会保険徴収機関に対して通報して、行政調査および追納手続を開始させることが可能である。『社会保険料徴収暫定条例』及び『社会保険査察弁法』のいずれにも使用者の未納保険料の追徴に関する時効の消滅が設定されていない。
関連規定及び実務経験に基づけば、社会保険料の追納範囲は、年数制限がなく、仲裁事項の影響も受けず、未払い期間全体に及ぶ。即ち、労働者による使用者への社会保険損失の賠償請求には1年の時効があるが、労働者が損害賠償等の民事請求権を行使する場合にのみ適用されるに過ぎず、この時効の成立は使用者の社会保険料納付義務そのものを免除または適法化するものではないと言うことになる。使用者が社会保険料を全額納付していない場合、その法定追納義務は仲裁時効の経過によって消滅することはなく、社会保険行政機関は全未納期間に対する追納権限を有している。
また、同法の第86条によれば、使用者が社会保険料を期日までに全額納付していない場合、未納分が追納されるほか、未納日から日割りで1万分の5の延滞金が加算されることになる。さらに、期限後も納付しない場合には、未納額の1倍以上3倍以下の罰金が科される可能性がある。加えて、「社会保険料徴収暫定条例」に基づき、関係部門は法に従い調査・処分を行うこともできる。実務上、現行法において、未納に伴う滞納金に対して免除する情状を定める規定はない。したがって、未納期間が長期にわたる場合や未納金額が多額に上る場合、滞納金が元本を上回るケースが生じ得る。深刻な場合、企業の正常な運営やキャッシュフローに巨大な影響を及ぼしかねない。追納リスクを抑えるためには、企業は従業員の社会保険納付状況を再チェックし、実際の賃金総支給額に基づいて社会保険料を納付ことが望まれる。
極めて例外的な事例として、『深セン経済特区社会養老保険条例』第40条に「使用者が規定に従って養老保険料を納付していないと従業員が認識した場合、権利侵害の事実を知り、または知るべきであった日から2年以内に、市の社会保険機関に苦情・通報するものとする。2年を超える苦情・通報については、市の社会保険機関は受理しない」と規定されている。実務において、ビジネス環境への影響を考慮し、追徴のみを行い、滞納金を徴収しないという対応をとる地域も存在する。ただし、このような対応は、企業の違法行為の具体的状況に応じて判断され、個別案件における交渉・調整の結果によるものであり、普遍的な対応ではない。企業としては、事後の救済に頼らず、事前に法令遵守と適正な対応を徹底されることが望まれる。

