陳子雷様 中国経済：成長の課題とトランプ・ショック | ダン・リーグ中日フォーラムパネリスト見解（一）
2025. 3. 8
陳子雷様 中国経済：成長の課題とトランプ・ショック | ダン・リーグ中日フォーラムパネリスト見解（一）
編集者注
2月14日、ダン・リーグ法律事務所は「日系企業法律サービスセンター」の設立式典を開催し、記念フォーラム「転換期における中日相互投資のあり方および中国の内需拡大」を成功裏に開催しました。本フォーラムには、中日両国の各分野の専門家や企業代表が一堂に、転換期における新たなビジネスモデルについて活発な議論を交わしました。本記事では、フォーラムに参加したパネリストの見解を厳選し、読者の皆様にお届けします。
「中国経済：成長の課題とトランプ・ショック」
上海日本学会 会長 陳子雷
中国経済の現状分析
2024年度のデータによると、中国の実質GDP成長率は5.0%に達し、前年の5.3%を上回る堅調な成長を示しました。特に、電気自動車（EV）、半導体、産業用ロボットなどのハイテク製品の輸出において顕著な成長が見られました。現在、中国の主要な輸出品は自動車、半導体、3Dプリンター、風力発電機が中心ですが、今後数年のうちに、自動車産業が発展し、造船、航空機、太陽光発電パネルの輸出へと拡大していくと予測されます。
一方で、中国経済は依然としていくつかの課題に直面しています。端的に言えば、「内需の不足」と「生産過剰」がその主な問題です。これに対応するため、中国政府は金融緩和や財政政策の調整など、一連の経済対策を実施しています。同時に、経済構造の調整を進め、「量的成長」から「質的成長」への転換を図り、技術革新と産業の高度化を推進することで、経済の持続的な成長力を強化しようとしています。
米中貿易競争
アメリカは中国に対して、一連の貿易制限措置を講じてきました。これには、関税の引き上げや技術移転の制限などが含まれます。これらの措置は、製造業の国内回帰を促し、国内産業を保護し、雇用を確保するとともに、アメリカの中国経済への依存度を低下させることを目的としています。これにより、中国企業も一定の影響を受けています。短期的には、中国企業に対する10%の追加関税の影響は限定的ですが、長期的には、貿易条件の悪化や生産拠点の移転、貿易構造の変化が徐々に現れると考えられます。特に、電気自動車、半導体、鉄鋼といった重要な産業分野において、その影響が顕著になるでしょう。
これらの課題に対応するため、中国政府は積極的な対策を講じています。アメリカからの輸入品に追加関税を課し、アメリカ企業への制裁を実施するなど、米中貿易交渉において強硬な姿勢を維持しています。また、他国や地域との経済貿易協力を強化し、「一帯一路」構想を推進することで、特定市場への依存を減らし、新興経済圏を創出しようとしています。特に、南米、中南米、ASEAN（東南アジア諸国連合）、中東、東欧といった地域との貿易関係を深め、輸出入のバランスを取ることに注力しています。
我々は、貿易戦争の影響が米中両国にとどまらず、世界経済全体に深刻な影響を及ぼしていることを認識する必要があります。これは、1930年のスムート・ホーリー関税法を想起させます。当時、この法律の施行により世界貿易が急減し、世界恐慌をさらに深刻化させました。現在、私たちは新たな歴史的な岐路に立たされており、世界経済は「分裂化」や「地域化」への転換のリスクに直面しています。この課題にどのように対応していくかが、今後の重要な課題となるでしょう。
