年間サービス契約を締結した監査法人がサービスを提供できなくなった場合、企業はどうすればよいか?
2024. 9. 20
年間サービス契約を締結した監査法人がサービスを提供できなくなった場合、企業はどうすればよいか?

Q: 最近、企業と年間監査サービス契約を締結した監査法人が、中国政府から罰則を受け、サービスを提供する資格を失う可能性があると聞いたが、それに応じて同法人との契約解除を求めることはできるか?
A: 中国の民法典によると、当事者の一方が契約上の義務を履行しない場合、またはその業務遂行が契約に適合しない場合、履行継続、是正措置、損失補償などの違約責任を負わなければならない。当事者の一方が契約上の義務を履行しないことを明示的に示し、または自らの行動で示した場合、他方の当事者は履行期間満了前に違約責任の負担を求めることができる。
会社が提示した情報からは、当該監査法人が必要な資格または能力を喪失したことを示す明確な証拠(有効な行政処分の決定)はなく、実際の監査業務も開始していない(通常、年度末に開始する)ため、当該監査法人は前述の同法にいう違約の状況には該当しない。
従って、会社が直接一方的に監査法人とのサービス契約を解除することは違約となる。
Q:有効な行政処罰決定とはどういう意味なのか?また、すでにウェブサイトで公表された処罰決定文書を見ただけでは不十分なのか?
A: 中国の行政訴訟法の規定によれば、行政処罰決定に不服がある当事者は、処罰決定書面を受領した日から60日以内に再審査を請求するか(通常は次の上級行政機関に、中央省庁が下した処罰決定の場合は同じ中央省庁に請求する)、法律で定められた期間内(通常は6ヶ月以内だが、他の法律がこれより短い期間を定めている場合は、法律が定める期間とする)に行政訴訟を提起する権利を有する。
行政上の再審または行政訴訟の期間は、確定した行政処分決定の履行には影響しないが、行政上の再審または行政訴訟により、当初の処分決定が取り消される可能性はある。特に、今回は監査法人の業務資格に関する罰則になるが、当該罰則決定が取り消されれば、監査法人は業務資格を回復することになる。
従って、行政処分の決定を見ただけで、該当する処罰を受けた組織が行政再審を申し立てるのか、行政訴訟を提起するのかが確定していない場合、行政処分の決定が取り消される可能性は否定できない。
もちろん、中国の行政再審法及び行政訴訟法の規定によれば、行政再審又は行政訴訟には一定の審理期間があり、当該行政処分の決定日から、契約上合意した監査業務を実施しなければならない期間内に有効な行政再審又は行政訴訟の決定ができないと推定される場合、上記のとおり、行政上の再審や訴訟の期間中であっても、既存の行政処分の執行が停止されるわけではないことから、このような状態も、同法人が当初の契約を履行する可能性を失ったことを示すのに十分である。言い換えれば、この監査法人は絶対的債務不履行の状態にあると結論づけることができる。それに応じて、契約を解除できる根拠がある。
Q: このような状況下で、会社が損失を避けるために、特に監査法人に課される可能性のある罰則により年次監査などの必要な業務が遅れることを避けるために、何かできることはあるか?
A: 監査法人が関連する法執行当局の調査を受けている、すなわち、法違反の疑いで正式に提訴され、調査されているという証拠がすでにある場合、これは、監査法人が契約を履行するために必要な実務資格を失う可能性があることを示すのに十分である。この場合、会社は、中国民法典の履行不安の抗弁に関する規定(民法典第527条、中华人民共和国民法典_中国人大网 (npc.gov.cn))を援用し、監査法人に対して、その契約を履行出来る合理的な説明、証拠、契約履行の為の担保を提供するよう求めることができ、監査法人が、会社の求める合理的な期間内に説明、証拠および担保を提供出来ない場合、会社は、一方的にサービス契約を解除し、他の適格な監査法人に適宜監査業務を委託することができる。
監査業務の実施時期がすでに比較的差し迫っている場合、会社は、法違反の疑いがある監査法人と交渉すると同時に、他の監査法人に働きかけ、適切な人数の会計士を手配して予備作業を実施し、契約解除が可能と判断された時点で、その後の正式な監査業務に直接つなげることも検討できる。もちろん、交渉の過程で、既存の監査法人が適切な監査を実施できなかった場合には、高額の違約金を負担することを提案することも可能である。このような圧力により法違反の疑いがある監査法人がサービス契約解除に自発的に応じることにもつながる。