食品添加物業界で注目されている「帯入原則」とその実務上の運用は?
2024. 8. 27
食品添加物業界で注目されている「帯入原則」とその実務上の運用は?

Q:食品添加物業界で注目されている「帯入原則」(キャリーオーバー原則)とその実務上の運用は?
A:「帯入原則」(キャリーオーバー原則)は「食品安全国家基準 食品添加剤使用基準(GB2760-2014)」(以下「GB」という)第3.4条で規定されている。簡潔に言えば、「キャリーオーバー原則」とは、ある食品原材料(A)に含まれる食品添加剤(B)が、Aを経由して食品(末端製品C)に持ち込まれ、GBで定める要件を満たしていれば使用が認められるということになる。また、「キャリーオーバー」は、⑴「受動的帯入」(第3.4.1条)と⑵「主動的帯入」(第3.4.2条)に分けることができる。
GBの要求と実務経験から言えば、(1)「受動的帯入」は次の要件を満たす必要がある。つまり、①当該食品添加剤が食品原料中で使用することが認められていること、②食品原料のなかで当該添加剤の使用量がGBで定める最大使用量を超えていないこと、③正常な製造工程の下でこれらの原料を使用し、かつ食品中での当該添加剤の含有量が原料に使用するレベルを超えていないこと、④食品原料から食品中に持ち越された当該添加剤の含有量が、当該食品に直接添加するのに通常必要とされるレベルより明らかに低いことである。簡単な例を挙げると、安息香酸は熟成肉製品には使用できないが、醤油への添加は認められる。そうすると、熟成肉製品の具材に醤油が使用されている場合には、醤油を経由して安息香酸の熟成肉製品への添加が認められることになる。ただし、検出される安息香酸の量は醤油から合理的に持ち越されるレベルを超えてはならないということである。
一方、「主動的帯入」には次の要件を満たす必要がある。つまり、①GBに基づき、当該食品添加剤が最終製品(食品)のなかに添加することが認められ、且つ食品中での使用量がGBの要求を満たしていること、②当該食品添加剤を添加した食品原料が特定の食品の原料としてしか使用していないこと、③食品ラベルに当該食品原料が特定の食品の製造に使用されていることを明記することである。簡単な例を挙げると、菓子専用油脂のなかに添加されているβ-カロテン油溶性色素は均一に分散させる機能を十分に発揮できるので、当該専用油脂が多くの菓子に使用されている。
「受動的帯入」と「主動的帯入」との主な違いは、持ち越された食品添加剤が最終製品(食品)に添加することが認められるかどうか、また、食品に工程的な役割を発揮しているかどうかにある。前者は最終製品(食品)への添加が認められず、「キャリーオーバー原則」で食品に加えられていても工程的な役割は発揮しない。これに対し、後者は最終製品(食品)への添加が認められ、かつ工程的な役割を発揮する。
中国では、食品添加剤の使用は厳格にGBに従って実行しなければならない。一部の食品添加剤が、食品原料や最終製品(食品)に直接使用できない場合には、「キャリーオーバー原則」を適用することが考えられる。ただし、食品原料や食品への添加が認められる食品添加剤の範囲と使用量、ラベル表示などがGBの要求に合致しているかどうかを確認しておくようご注意を頂きたい。