失権株主が持分を譲渡する法的責任
2024. 8. 16
失権株主が持分を譲渡する法的責任

Q:出資義務を履行完了していない株主が払込未了持分を譲渡する場合に責任を負うリスクはあるか?
A:改正「会社法」が7月1日から正式に施行され、今回の改正の中で初めて追加された「株主出資督促失権」制度が注目されている。株主に実際の払込義務を履行するよう促し、すでに実際の払込義務を履行している株主と会社の債権者との利益を保護する上で積極的な役割を果たすとともに、「五年払込完了」制度と呼応したものとなっている。
現在、株主失権制度に対する議論と解読はあまたあるので、ここでは割愛する。しかし、失権した後の株主に対する取り扱いについては、改正「会社法」第52条第2項の規定によれば「前項の規定に従い喪失した持分については、法により譲渡し、または登録資本を相応に減少させ、かつ当該持分を抹消しなければならない。6か月以内に譲渡または抹消が行われない場合には、その他の株主がその出資比率に従い相応の出資を行い不足分を補う」とされている。従って、出資義務を履行せず、最終的に払込未了持分を喪失した株主は、当該部分の持分を法により譲渡することが株主としての失権後の一つの選択となるわけだが、この状況下で持分譲渡を行った場合、当該失権株主はまだ対外的に責任を負うリスクがあるのだろうか?現行の規定と我々の経験に基づき、ここで次のように分析する。
前段で引用した法規で述べたように、喪失した持分については、失権株主は法により持分を譲渡することで、会社全体が引き受けた資本と期待可能な資本額の安定を保つことができる。一方、この際に譲渡された持分がすでに出資期限が到来した持分であることを鑑みて、改正「会社法」第88条には「会社の定款に定める出資日どおりに出資を払い込まない株主、または出資する非貨幣性財産の実際の価額が引き受けた出資額を著しく下回る株主が持分を譲渡する場合、譲渡人は譲受人と連帯して出資不足の範囲内において責任を負う。譲受人が上記状況の存在を知らず、かつ知りうるべきでない場合、譲渡人が責任を負う」との定めがある。このように、株主の失権譲渡は一般的な主導的な持分譲渡とは異なり、受動的に持分を譲渡するものであるものの本質的には持分譲渡の性質に該当し、上記の規定が直接的に適用されるべきとなる。すなわち、譲渡した部分の持分についても譲受人が全額払い込むことによって失権株主としての会社の債権者に対する責任が完全に免除される。逆に、たとえ失権株主が不足部分の持分について譲受人に持分譲渡したとしても、例えば、持分譲渡契約を締結して発効したとしても、譲受人が相応の出資を全額払い込まない限り、譲渡人である失権株主は、出資不足の範囲内で、譲受人である株主と連帯して全額出資の義務を会社債権者に対して負わなければならない。これによって債権者の債権利益が保護されることになる。