納品契約不履行に対して起訴する際のポイント
2024. 5. 8
納品契約不履行に対して起訴する際のポイント

Q:当社は、あるブランド自動車メーカーに長期にわたり指定部品を供給しています。当初の契約では、当社は指定時間に製品を先方へ納品することになっていますが、実際には、まず顧客が要求する時間までに当社が生産を完了させて顧客に通知し、顧客が自社の需要に応じて製品の引き取りを要求し、車両を手配して当社の倉庫まで引き取りに来ています。しかし、昨年4月以降、顧客から引き取りの要求が提起されなくなり、当社から口頭で再三催促しても顧客は引き取りを手配せず、代金も支払っていません。これまで倉庫保管料が発生し続け、倉庫に滞留している製品の価格は数百万元にも達しています。もしもこの時点で当社が顧客を提訴するとしたら、どのような点に注意する必要があるでしょうか?
A:第一に、貴社の説明によると、実際の履行状況と契約で定めた内容に齟齬があることになります。そこでまず、これらの相違が双方の合意によるものであると証明できるか検討する必要があります。すなわち、両当事者による実際の履行行動は当初の契約条件を変更したものであるとします。そうでなければ、当初の契約により、貴社は約束した期日に製品を納品する必要があったにもかかわらず、実際には納品していないことになり、逆に、貴社の契約不履行となってしまいます。そこで以下の点を確認することをお勧めします。
- 顧客はいかなる方法で貴社に対して納品方法の変更を通知してきたか(電話、WeChat、email、その他の方法)。証明する証拠はあるか。
- 以前から何度も変更後の方法で引き渡し義務を履行していたとするならば、引き渡しの前後に、貴社は製品が引き渡し出来ることをどのように通知してきたか、顧客は製品の引き取りの手配などをどのような通知方法で要求してきたか。それを証明する証拠はあるか。
- いままで顧客が車両を手配して製品を引き取りに来ていたとするならば、輸送業者(運転手を含む)が倉庫から製品を受け取る際にサインなどをした文書がないか。
第二に、両当事者が当初の契約で定めた納品方法を変更したと証明できる場合には、現在の状況は、倉庫内の製品の引渡時期(納期)が確定されていないことになります。この状況においては、顧客が契約違反していると単純に理解することはできません。従って、まず、いつ納品すべきかを取り決める必要があります。
そのために以下の通り提案します。
1、再度、顧客に明確な書簡を提出し、双方で行ってきたこれまでの取引状況を振り返り、そのうえで、顧客の要求で生産を完了し、すでに何度も引き渡したいと提起してきたが、顧客は一貫して引き取りを手配せず、在庫が滞留していることを重点的に説明します。
また書簡の中で、在庫圧力を抱えている期間が長かったことについて、期日を定めて製品を引き取る手配をするように顧客に要求し、さもなければ、故意に納期を引き延ばしているとみなさざるを得ないと説明します(すなわち、主体的に書簡を送付することで引き渡し時期を可能な限り明確にします)。ここで指定する「期日」は、在庫量や、通常の契約履行期間中に引き渡している月間出荷量などを総合的に考慮して合理的に設定します。
書簡の最後には、合理的な期間内に回答するよう求めます。
2、上記の書簡に対する返答がない場合には、同様の内容を簡略化して再度、書簡を送付します。
依然として返信がなければ、故意に契約の履行を遅延させているとして訴訟に進みます。
第三に、具体的な訴訟請求においては、契約履行の遅延が主とする行為となるので、代金の支払いは直接に主張できず、契約履行の継続を要求して、相応の代金を支払うよう提起することになります。なお、利息、保管料等については、契約で明確に定めていないため、また、上述の通り、当初の契約を変更したのちに納期が明確にされていないために(顧客からの通知を待つ状態である)、支持を得る可能性は低いです。
当然ながら、実際にはまだ納品と検収が行われていないことからも、検収した結果で品質に問題があると判明した場合には、顧客は品質不良に相応する貴社の責任も主張することもできますので、注意してください。
したがって、相手方に契約を継続して履行する意思がないと確実に判断でき、かつ製品を転売する可能もある場合には、訴訟において契約を解除し、貴社へ相応の賠償を支払うプランで和解するように協議することも考えられます。むしろ、この方法のほうが紛争を最終的に解決するのに資するかもしれません。