2022年の労働人事相談・紛争解決の振り返り(二)
2023. 2. 3
2022年の労働人事相談・紛争解決の振り返り(二)

2022年に弊所が取り扱った労働人事相談及び労働紛争の状況について(一)に続き、その特徴を紹介します。
一、新たな社内制度の徹底が困難
昨年はコロナウイルス感染対策での長期ロックダウン等による不安から、社内でコロナ対応等のタイムリーな新方針・新制度を導入しようとしても合意形成が得られない企業が散見されました。社員の不安感が政府、コミュニティ、そして職場への不信感に転じたケースと考えられます。A社では、在宅勤務管理暫定規定を公表し、社内説明会で社員の承認サインを求めましたが、半数近い社員が疑問を抱いて承認を拒絶しました。万一、労働争議に発展した場合には会社側に不利な状況が生じています。
二、勤務怠慢社員への配置転換・契約解除需要が増加
コロナ禍のなかで勤務怠慢な社員が増えたという声が多く寄せられています。同時に配置転換や労働契約を解除する案件が増えています。こうした社員が増えた原因には、外出や出張が多かった業務の勤務形態に変化が生じたことや、蔓延している「躺平(寝そべり)」文化、さぼる風潮が影響していることなども考えられます。B社では、ロックダウン以来、業務を展開できない営業部門の社員たちを他部門へ異動、あるいは経済補償金を支払って労働契約を解除する提案をしました。本件では、弁護士が配置転換の交渉、契約解除の面談に協力し、円滑に提案が実行されました。
三、不適切な通報手段が増加
多くの日系企業ではコンプライアンスの現地化が進み、社内通報窓口を経由した内部通報制度が社員に周知され、不正の早期発見、通報者保護、不正情報の真偽審査、外部通報の防止などが徹底してきています。しかし最近は、最上級役員に直接に不正情報を送信したり、必要な範囲を超えて会社または同僚に対する不満を発露したりするケースが増えています。C社では、ある社員が上司の不正行為とその私生活の乱れを本社及び現地社員全員にccで通報して大きな混乱を招きました。