従業員の忠誠心を高めるための従業員株式インセンティブ制度
2023. 2. 6
従業員の忠誠心を高めるための従業員株式インセンティブ制度

企業にとって、人材は価値創出の原動力で最大の資本であるといっても過言ではない。近頃コロナ禍によるリモートワークが常態化する中、密接なコミュニケーションがうまく取れていない状況がよくみられる。特に日系企業の場合にはFace-to-Faceでのコミュニケーションを相互理解の基盤としていることが多く、リモートワークによって「忠誠心」などというソフトな要素を理解することは非常に難しいと言わざるを得ない。
本稿では客観的な要素で職場の状況を見つめなおし、従業員の忠誠心を高めるための目新しい方法を紹介する。
ここ数年、中国の代表的な企業である華為、寧徳時代など、一部の中国国内企業は「株式インセンティブ」、「人材育成計画」、「競業禁止」のプランを取り入れ、人材を確保し、良好な企業成長の効果を得ている。
外資企業も同じく自社にあったインセンティブプランを導入して安定的な「人材確保」を実現することが可能である。従来の報酬アップ、昇格・昇進などの方法以外にも「従業員株式インセンティブプラン」が注目されているが、この場合、リスクヘッジが大きな課題になっている。不合理的なプランの場合、労使問題だけに留まらず、最終的には株権紛争にもなりえる。特に外資企業の場合、外貨管理、法律規制などの問題があり、適切なコンプライアンス措置が必要となる。
外資企業が株式インセンティブプランを導入する際の法的問題とその対応策について我々の経験を踏まえて次にていくつか紹介する。
1. 譲渡制限付き株式インセンティブ
2020年に実施されている「外商投資法」により外資企業の株主の種類に制限がなくなっている。即ち、中国国内の従業員も投資、配当などの方法により一定比率の企業の株式を取得することができる。ただし、株式を取得した従業員が第三者にこれを譲渡または相続することを望まない企業が圧倒的に多い。この場合は、第三者への譲渡・相続が制限されるリストリクテッドストックというインセンティブプランの採用が考えられる。仮に自社株取得を検討する従業員が多い場合、特定の目的をもつ企業(SPV)を設立することによりリストリクテッドストックというインセンティブプランを導入することも可能である。
2. 仮想持株
従業員が実際の株式を保有することに対して懸念を持つ企業は、「会社を株式会社と見なし、その純資産で一株当たりの価値を計算し、従業員に配当する」という仮想持株の方法が考えられ、従業員は株主と同様に持株に応じて権利及び株価上升による利益を受けることができる。ただし、会社全体の資産統計能力に対する要求が高く、また、報酬支給における税金の種類分けにも十分留意しなければならない。
3. ストックオプション
ストックオプション制度は上場会社または上場準備企業でよく見られるプランである。当該制度は、会社があらかじめ定めた価格(比較的に低い価格)で一定の量を購入できる権利を付与する制度である。この場合、企業の発展速度とその規模に対する要求が高い。また企業として、オプションへの制限条項、株式(持分)の事前保留、オプションとして設置する持分(株式)割合などについて留意する必要がある。
4. 国外上場企業(本社)の株式インセンティブ制度に参加する制度
中国子会社の従業員が中国国外の本社の株式インセンティブ制度に加わるプランであり、この場合、中国の法律規定に基づき外貨管理に関する申告を行う必要がある。またご留意いただきたい点として、本社で一部報酬を得るため、その額に対して中国国内で従業員の給与額を控除することになり、コンプライアンス上、労働契約の補充協議を締結する必要がある。