私有車の業務使用における潜在的なリスク
2022. 10. 10
私有車の業務使用における潜在的なリスク

Q: 中国では私有車の普及に伴い、私有車で通勤する従業員が増加しており、さらに一部の従業員は業務で外出する時も私有車を運転、使用するようになっています。そのため、このような「私有車の業務使用」において、会社を運営する上でどのような潜在リスクが存在するのでしょうか。
A:「私有車の業務使用」とは、従業員が会社から依頼された仕事を全うするために取る行動であり、性質上、職務行為に当たります。これらの法律判定を前提として、「私有車の業務使用」において関わる可能性のあるそれぞれの主体と結び付け、現行の法律法規において会社に潜在する法律リスクについて以下の通り説明します。
1. 「私有車を業務使用した」従業員本人が損害を被った場合
国の労災保険の関連規定によると、従業員は業務で外出している間、仕事が原因で傷害を受けた場合は労災に該当します。従って、「私有車を業務使用した」従業員が外出業務の間に事故に遭った場合、その被害は労災の範囲に入れられる可能性が高くなります。労災として認定された後、使用者は国の労災保険規定に従って従業員のために必要な賠償を負担します。事故が第三者によるものであれば、使用者は一定の範囲内で、既に従業員のために負担した賠償を第三者に請求することができます。
2. 「私有車の業務使用」において私有車に損害があった場合
国の法律法規では、「私有車の業務使用」において、私有車に損害があった場合の賠償責任分担は規定されていません。財産損失に関する権利侵害責任の一般的な責任帰属原則によれば、過ちに基づいて賠償責任を確定しなければなりません。第三者によって私有車が損害されたという因果関係が存在する場合、第三者は従業員に対し財産賠償責任を負わなければなりません。第三者要素も従業員の個人要素もない場合、現在の司法実態から見れば、使用者は私有車の財産損失賠償責任を負うことを要求される可能性があります。
3. 第三者損害
(1)使用者と労働関係のない第三者が損害を被った場合
「民法典」の係る規定によると、使用者の従業員が業務上の任務を遂行するために他人に損害をもたらした場合、使用者が権利侵害責任を負うものとしています。それと同じく、「私有車を業務使用した」従業員が第三者に損害をもたらした場合、会社は第三者に賠償責任を負わなければならない可能性が高くなります。当然のことながら、会社が責任を負った後、当該権利侵害において、従業員に故意や重大過失があった場合、会社は従業員に賠償を請求できます。
(2)使用者と労働関係のある第三者が損害を被った場合
前述の分析通り、これらの状況は労災となる可能性が高いため、使用者として、労災保険の関連規定に従って相応の賠償責任を負わなければならない可能性があります。