疫病に伴う労働争議紛争の処理に関するQ&A
2022. 5. 19
疫病に伴う労働争議紛争の処理に関するQ&A

質問1 疫病に係る労働争議紛争の処理において、どのような原則に従うべきか?
回答: 全市各レベルの法院と人事・社会保障部門は、企業の雇用安定を支援し、労働者の合法的権益を効果的に保護することで、調和と安定した労働関係を維持するという価値目標により、市内の疫病に関わる労働争議を適切に解決することを重視しております。法律に従って労働争議を適時に処理するためには、以下の原則に従い、これを遵守しなければならなりません。
第一は、調和と安定です。雇用と生産の維持、安定と発展の促進、企業の困難を緩和することにより、企業の雇用安定を援助するという政策要求を積極的に実行し、疫病の予防と対策が企業と労働者に与える影響を十分に考慮して、調和と安定した労働関係の維持に努め、疫病に関わる労働契約解除の紛争を慎重に取り扱い、企業が秩序正しく仕事と生産の再開を行い、労働者の合法的権益を保障しなければならなりません。
第二は、共通認識を持つために交渉を行うことです。労働関係における両当事者の相互協力と交渉の理念を確立し、労働紛争案件を慎重に処理すべきです。または疫病の予防と対策に起因する仕事方法、労働時間および労働報酬に関する紛争および矛盾は、可能な限り交渉および調停によって解決し、労働契約の継続を促進するとともに、疫病中のリスクを共有し困難を克服するという労働関係の両当事者の相互依存を顕在化させます。
第三は、バランスのとれた保護です。法律に基づいて労働者の合法的権益を保護し、企業の安定的かつ秩序ある発展を促進するという精神を常に堅持し、疫病または疫病予防対策が両者に与える影響を十分に考慮して紛争の処理を行い、労働者の基本的生活と雇用の安定を確保するとともに、企業の生存と発展、秩序ある運営に必要な条件を整えなければならなりません。
第四は、解決の多様化です。労働組合、司法・行政機関、企業連合会、工商連合会、基幹の調停組織と積極的に連携し、連携した作業メカニズムの有効性を十分に発揮させ、コミュニケーションと調停の努力を高め、早急に対立紛争を基幹の段階で調停し、萌芽期において解決を図ります。集団的、突発的、敏感で、且つ重大な利益などに係る労働争議紛争に対しては、労働保障監査の迅速な対応、迅速な介入のメリットを積極的に発揮しなければならず、また企業主体と労働者の真実の訴えを注意深く見守り、労働リスクの早期警戒を怠らず、全力を尽くして都市の安全、社会の安定、市民の安全を守り、経済社会の平穏で健全な発展を助けなければなりません。
質問2 疫病または疫病発生封鎖措置の影響を受けている間、雇用企業が労働者の切実な利益に直接関連する規則・制度または重大事項を制定、改正または決定する際、民主的な協議および告知手続きをどのように履行するか?
回答:疫病または疫病発生封鎖措置の影響を受けている間、雇用企業は電子メール、内部オフィスオートメーション(OA)システム、ウィチャットグループなどの形式を通じて、業務·生産停止、労働報酬の変更、勤務方式と勤務時間の調整、交代勤務など労働者の切実な利益に直接関連する規則制度または重大事項などの関連方案と意見を提出し、労働組合または従業員代表に意見を求めることができます。協議を経て疫病発生期間にのみ適用されることを確定し、労働者に伝達または告知した場合は、民主的な協議と告知手続きを履行したと見なされます。
質問3 疫病または疫病封鎖措置の影響を受けて、雇用企業が労働者と書面による労働契約を適時に締結または更新しなかった場合、法的影響はどのように判断すべきか?
回答:疫病または疫病封鎖措置の影響により、雇用企業が客観的に法律に基づき労働者と書面による雇用契約を締結または更新できない場合、雇用企業は労働者との合意により電子形式の雇用契約を締結または更新、または交渉により書面による雇用契約の締結または更新の時期を合理的に延長することができます。労働者が、雇用企業が自分との間で実際に書面による労働契約を締結または更新していないことを理由として、書面による労働契約を締結または更新しなかった期間に対応する賃金の2倍の差額の支払いを請求した場合、その請求は支持されません。
質問4 労働者が新型コロナウィルス患者、無症状感染者、濃厚接触者と確認され、隔離治療または医学観察期間中、雇用企業は賃金報酬をどのように支払うべきか?
回答:労働者が自身に帰責しない原因で新型コロナウィルス患者、無症状感染者、濃厚接触者と確認され、隔離治療または医学観察措置が取られ、正常な労働を提供できなくなった場合、「中華人民共和国伝染病予防治療法」第四十一条第二項の規定に基づき、雇用企業は労働者が正常に働いているときの賃金基準に基づいて隔離治療または医学観察期間の賃金を支払わなければなりません。
更に、隔離治療または医学観察期間が終了した後も、労働者が仕事を停止して治療を行う必要がある場合、雇用企業は従業員の病気医療期間の関連規定に従って給料を支払わなければなりません。
質問5 労働者が疫病や疫病の予防措置の影響を受けて正常に出勤できない場合、雇用企業はどのように労働者の賃金報酬を支払うべきか?
回答:労働者が疫病または疫病封鎖措置の影響を受けて、雇用企業に正常に出勤できないことで、労働者が雇用企業に賃金報酬を支払うことを主張した場合は、以下の状況によって区別して処理することができます。
第一は、雇用企業が労働者に在宅勤務、テレワークなどの方法で正常な労働を提供するよう手配した場合、労働者が正常に出勤したとみなし、雇用企業は労働者が正常に出勤した時の賃金基準に基づいてその賃金報酬を支払わなければなりません。
第二は、雇用企業が労働者の在宅勤務、テレワークを手配していない場合、または労働者が上述の方法で労働を提供できない場合、雇用企業は労働者が上述の期間に有給休暇、企業が自ら設定した福祉休暇などの各種休暇を優先的に使用するように手配し、また相応の休暇の賃金基準に基づいて労働者の賃金報酬を支払わなければなりません。
第三は、上述の二つの状況が存在しない場合、または疫病発生または疫病封鎖措置によって労働者が正常に出勤できない期間が労働者の各種休暇の累計日数を超えた場合、雇用企業は国の労働停止、生産停止期間中の賃金支払いに関する規定を参照にして労働者と協議することができます。1つの賃金支払い周期内に労働契約で約束した賃金基準に基づいて労働者の賃金報酬を支払い、1つの賃金支払い周期を超えた場合は、関連規定に基づいて生活費を支給します。
質問6 雇用企業が疫病発生状況または疫病封鎖措置の影響を受けて生産経営が困難になった場合、労働者の賃金を猶予することができますか?
回答:人力資源社会保障部などの部門が公布した「新型コロナウイルス感染肺炎の予防と制御期間における労働関係を安定させ、企業の再稼働と再生産を支援することに関する意見」の関連指導意見および「上海市企業賃金支払い方法」第十条の規定によると、企業は疫病発生または疫病封鎖措置の影響を受けて生産経営が困難で、しばらく時間通りに賃金を支払うことができない場合、労働組合または従業員代表と協議して合意した後、労働者の賃金の支払いを一時的に延期することができるが、延期期間は一般的に1ヶ月を超えないとしています。
質問7 疫病または疫病封鎖措置の影響を受け、雇用企業が操業停止、生産停止、一時的な生産・経営困難などの原因で、労働者の労働報酬を適時に全額支払わなかったり、法律に基づいて労働者のために社会保険料を納付しなかったりした場合、労働者はこれを理由に労働契約の解除を提出し、雇用企業に経済補償の支払いを要求した場合、どのように処理すべきか?
回答:疫病の発生状況または疫病封鎖措置の影響により、生産停止または一時生産・経営が困難になった雇用企業、特に中小・零細企業が、労働者の労働報酬を適時に全額支払わなかったり、法律に基づいて社会保険料を納付しなかったりすることにより、労働者が労働契約を解除する紛争が生じた場合、和解、調停などの方法を通じて、矛盾の解消に力を入れ、双方の労働関係の回復を促進し、労働契約を継続して履行するよう促進します。労働者が「中華人民共和国労働契約法」第三十八条の関連規定に基づいて労働契約を解除することを主張し、雇用企業に経済補償を支払うことを主張する場合、慎重に処理を行う原則を堅持しなければなりませんが、一般的には支持されません。
質問8 労働者が雇用企業の在宅勤務、テレワークの手配に同意せず、雇用企業が労働条件を提供していないという理由で労働契約の解除を提出し、雇用企業に経済補償の支払いを要求した場合、どのように処理すべきか?
回答:疫病の発生状況または疫病封鎖措置の影響により、労働者が職場に来て正常な労働を提供できない場合、雇用企業は民主的協議または労働者との意思疎通などの手続きを通じて、労働者の在宅勤務、テレワークを手配することは、企業と労働者双方が共同で疫病発生状況に対応するためにとる方式であり、労働者の労働権利の保障および企業の正常な運営の維持に積極的な役割を果たしています。雇用企業が在宅勤務、テレワークなどの仕事手配を適切、且つ合理的に行い、労働者の合法的権益を侵害していない場合、労働者は積極的に協力しなければなりません。労働者が雇用企業は労働契約の約定通りに労働条件を提供していないという理由で労働契約の解除を提出し、雇用企業に「中華人民共和国労働契約法」第四十六条の関連規定に基づいて経済補償を支払うよう要求した場合は支持されません。
質問9 新型肺炎患者、無症状感染者、濃厚接触者と確認され、隔離治療または医学観察措置が取られ、疫病発生または疫病封鎖措置の影響で正常な労働を提供できない派遣労働者に対して、労働者は派遣先に戻すことができますか?
回答:人力資源社会保障部、全国総工会などの部門の意見によると、疫病封鎖措置による労働関係の安定に与える衝撃と影響を回避、減少させるため、企業は疫病発生防止期間中に関連措置の影響を受けて正常な労働を提供できない労働契約を解除したり、派遣された労働者を戻したりしてはなりません。これにより、新型肺炎患者、無症状感染者、濃厚接触者と確認され、隔離治療または医学観察措置が取られ、疫病発生または疫病封鎖措置の影響で正常な労働を提供できない派遣労働者を雇用企業は派遣先に戻してはなりません。
質問10 疫病の予防と制御期間中、労働者が政府部門の疫病予防と制御措置に協力しないために刑事責任を追及されたり、治安拘留などの行政処罰を受けたりした場合、雇用企業は労働契約を解除することができるか?
回答:疫病封鎖措置をとる期間中、労働者が政府部門の疫病の予防と制御措置に協力しないために刑事責任を追及された場合、雇用企業は「中華人民共和国労働契約法」第三十九条第(六)項の規定に基づき、法律によって労働契約を解除することができます。労働者が政府部門の疫病封鎖措置に協力しないため、治安拘留などの行政処罰を受け、雇用企業が法律に基づいて制定した規則・制度においてこの状況が労働契約を解除できるかどうかについて規定がある場合、その規定に基づいて処理することができます。
質問11 疫病発生期間中の「共有雇用」モデルで調節された労働者の合法的権益に対して、どのように保護を強化すべきか?
回答:共有雇用モデルでは、原則として貸し出し単位、借り入れ単位、調節された労働者の三者間に二重労働関係が形成されていると認定するべきではありません。共働き期間中、調節された労働者と貸し出し先は依然として単一の労働関係であり、双方の労働権利義務は変わりません。
法律によって調節された労働者の合法的な労働権益を守るために、共同雇用の貸し出し企業と借り入れ企業、調節された労働者が共同雇用協定に署名するよう積極的に誘導しなければなりません。共有労働契約の締結は平等、誠実、公平、合理的などの原則に従うべきであり、公序良俗に背いてはならず、法律、法規の禁止規定に違反してはなりません。共有雇用協議は共有雇用の期限、職場、仕事内容、仕事時間、労働報酬の決済方式、決済周期及び支払い方式、労働保護条件、休憩休暇などの内容について約定することができ、約定する日時或いは時給基準などは本市の最低賃金基準に違反してはなりません。貸し出し企業または借り入れ企業は共同雇用協議の約定に従って各自の義務を確実に履行し、法律によって調節された労働者の労働報酬を支払い、また調節された労働者の休憩権利と労働安全保護条件を確保し、調節された労働者の合法的権益を十分に保障しなければなりません。
質問12 疫病の影響を受けて、労働人事紛争の仲裁時効または起訴期間はどのように認定すべきか。当事者が関連する仲裁活動や訴訟活動に正常に参加できない場合、どのように処理すべきか?
回答:「中華人民共和国労働争議調停仲裁法」「中華人民共和国民事訴訟法」「中華人民共和国突発事件対応法」の関連規定に基づき、疫病の影響を受け、当事者が法定期間中に労働人事争議の仲裁を申請したり、訴訟を提起したりすることができない場合、仲裁の時効の中止、影響を受ける期限が起訴期限内に計算されないという規定を法に基づいて適用することができます。疫病の影響を受けて、当事者が仲裁または訴訟活動に正常に参加できない場合、法律によって仲裁、訴訟手順の中止規定を適用することができるが、法律に別途規定がある場合は除外します。労働保障監察の手順は労働監察の関連規定に従って処理します。
出典:上海発布