安定を最優先し、前年より経済発展を目指す
2022. 3. 7
安定を最優先し、前年より経済発展を目指す

北京の人民大会堂で、3月4日に第13期中国人民政治協商会議第5回会議と3月5日に第13期全国人民代表大会(全人代)第5回会議の両会が開幕しました。
全国政治協商会議では、王洋主席が1年間の業務を報告し、劉新成副主席が昨年に政治協商委員・単位が提起した6,117件の提案のうち5,039件が立案され99.8%が既に反映されている状況を報告し、今後も党と国の政策決定、感染予防、経済社会発展、各種事業の推進に貢献するよう呼びかけました。
全人代では李克強総理が国務院を代表し、政府活動報告を行いました。2022年の計画としては、経済成長目標を5.5%前後、都市部の新規就業者数を1,100万人以上、都市部の調査失業率を5.5%以内と昨年並みとし、インフレターゲットを3%前後としました。財政赤字のGDP比は2.8%前後と昨年より若干抑え、予算規模は昨年より2兆元以上増やし、地方特別債は3.65兆元とするとしました。また、製造業、小企業、零細企業、自営業者向けの減税・費用引下支援策を継続し、減税幅を広げて適用範囲を拡大し、年間約2.5兆元の減税政策を実施するとしています。政府資金による投資では、社会・民生分野の脆弱性を補強するとしています。
政府活動報告の主要内容は、公布された中日対照訳によると本文下部に掲載している通りです。
なお、今年の政府活動報告について、国家発展改革委員会の何立峰主任は、3月5日に記者会見の場で記者の質問に応じ、「2021年のGDPが114.4兆元で米ドル換算(1米ドル=6.45人民元)17.7兆ドルに達し、(8.1%成長により)G20国中第6、7位の国家の経済規模に相当する増加をしていて、中国経済の強じん性と市場の活力とリスク対応能力の強さを示している。今年の5.5%前後の成長目標は達成可能な自信と基礎がある」と回答しています。
また、WEB上では発表された増量研究院の張奥平院長の寄稿によると、2020年の経済成長の低迷(GDP2.2%増)からの回復を受けて2021年は6%以上とする目標を上回り8.1%増となったが、2022年にGDP5.5%前後の成長目標を達成するには2021年以上の経済発展速度になるとみています。張院長は、中国経済と取り巻く環境は、外部要因としての先進国経済の金融緩和政策、国際商品・原材料価格の高騰等と、内部要因としての産業政策調整、エネルギーコントロール等があり、市場の縮小、供給の逆風、成長スピードの低減の三重圧力に直面していて、こうした状況下で5.5%前後の経済成長を達成するには、今年第2四半期に衰退期から新たな復興期に入り、党大会を迎えることになると予測しています。さらに、2035年の長期目標でGDPを2020年の倍にし、一人当たりGDPを中級発展国レベルにする目標を達成するには2021年から15年間の年平均成長率は4.7%前後となるため、2022年の5.5%前後目標は今後の長期成長空間を残すものとなっていると指摘しています。張院長が今年の政府活動報告の「ビジネスプラン」から読み取る6大重点目標は以下の通りです。
主要目標1:GDP5.5%前後成長による安定成長の勢い。
主要目標2:マクロ政策で財政5.5%前後の経済成長による安定成長の勢い。
主要目標3:改革深化で全株式登録制、独占禁止強化。
主要目標4:イノベーション発展で新たな経済力を継続投入。
主要目標5:内需拡大に商品の安定と投資の拡大。
主要目標6:グリーン発展へ炭素排出量削減を推進。
政府活動報告の主要内容(中日対照訳文による):
Ⅰ.2021年の活動の回顧
- 経済の回復・発展が保たれた。
- イノベーション能力がいっそう強まった。
- 経済構造と地域的配置が引き続き改善された。
- 改革開放が不断に深化した。
- 生態文明建設が持続的に推進された。
- 人民の生活水準が着実に向上した。
- 新型コロナウイルス感染症対策の成果が定着した。
主な活動:
(1)マクロ政策の連続性と的確性を保ち、経済の動きが合理的な範囲内に保たれるようにした。
(2)企業の苦境脱却支援策を充実させて徹底し、経済回復の基盤をうち固めた。
(3)改革を深化して開放を拡大し、ビジネス環境を持続的に改善した。
(4)イノベーションによるけん引を強化し、産業チェーン・サプライチェーンの安定化をはかった。
(5)都市・農村間、地域間の調和発展を推し進め、経済配置を絶えず最適化した。
(6)生態環境保護を強化し、持続可能な発展を促進した。
(7)民生の保障と改善に力を入れ、社会諸事業の発展を加速した。
(8)法治政府の建設とガバナンスの刷新を推し進め、社会の調和と安定を保った。
Ⅱ.2022年の経済・社会発展の全般的要請と政策の方向性
政府活動を完遂すべく、習近平同志を核心とする党中央の力強い指導のもと、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、中国共産党第19回全国代表大会(第19回党大会)と第19期中央委員会の各回全体会議の精神を全面的に貫徹・実践し、偉大な建党精神を発揚し、「安定を保ちつつ前進を求める」という活動全体の基調を堅持し、新たな発展理念を完全に、正確に、全面的に貫徹し、新たな発展の形の構築を加速させ、改革開放を全面的に深化させ、革新駆動型発展を堅持し、質の高い発展を推進し、供給側構造改革を主軸とすることを堅持し、感染症対策と経済・社会発展を統一的に進め、発展と安全を統一的に考慮し、引き続き「六つの安定」、「六つの保障」の活動にしっかりと取り組み、民生を持続的に改善し、マクロ経済の基盤の安定化に力を入れ、経済の動きを合理的な範囲内に保ち、社会の大局の安定を保ち、勝利のうちに第20回党大会の開催を迎えなければならない。
GDP成長率は5.5%前後とする。
マクロ政策の連続性を維持し、有効性を高める必要がある。
引き続き恒常的な感染症対策にしっかりと取り組む。
今年の政府活動はあくまで安定を最優先し、安定の中で前進を求めなければならない。
Ⅲ.2022年の政府活動の任務
(一)マクロ経済の基盤の安定化に力を入れ、経済の動きを合理的な範囲内に保つ。
- 積極的な財政政策の効果を向上させる。
- 穏健な金融政策の実施を強化する。
- 雇用優先政策を強化する。
- 食糧とエネルギーの安全保障をはかる。
- 重大リスクを防止・解消する。
(二)市場主体の安定と雇用の確保に努め、マクロ政策の実施に一段と力を入れる。
- 新しい租税・料金支援政策パッケージを実施する。
- 金融の実体経済への効果的な支援を強化する。
- 企業の生産・経営コストダウンを推し進める。
- 雇用安定化措置をきめ細かに徹底する。
(三)揺るぐことなく改革を深化させ、市場の活力と発展の内生的原動力をよりいっそう引き出す。
- 政府の機能転換を加速する。
- 多種類の所有制経済の共同発展を促進する。
- 財政・租税・金融体制改革を推し進める。
(四)革新駆動型発展戦略を踏み込んで実施し、実体経済の基盤を強化・拡大する。
- 科学技術イノベーション能力を増強する。
- 企業によるイノベーションを大いに奨励する。
- 製造業のコアコンピタンスを強化する。
- デジタル経済の発展を促す。
(五)揺るぐことなく内需拡大戦略を実施し、地域間の調和発展と新型都市化を推進する。
- 消費の持続的な回復を推進する。
- 有効投資を積極的に拡大する。
- 地域間発展の均衡性・調和性を増強する。
- 新型都市化の質的向上をはかる。
(六)農業生産に大いに力を入れ、農村の全面的な振興を促す。
- 食糧など重要農産物の安定生産と安定供給を強化する。
- 貧困脱却堅塁攻略の成果を全面的に定着させ、拡大する。
- 農村の改革・発展を着実かつ穏当に推し進める。
(七)ハイレベルの対外開放を拡大し、貿易・外資の安定成長を推し進める。
- さまざまな措置を講じて貿易を安定させる。
- 外資を積極的に利用する。
- 質の高い「一帯一路」共同建設を行う。
- 二国間・多国間経済貿易協力を深化させる。
(八)生態環境を持続的に改善し、グリーン・低炭素発展を推し進める。
- 生態環境総合対策を強化する。
- 二酸化炭素排出量ピークアウト、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを秩序立てて推進する。
(九)民生を確実に保障・改善し、社会統治を強化・革新する。
- 教育の公平と質的向上を促進する。
- 医療衛生サービス能力を高める。
- 社会保障とサービスを強化する。
- 引き続き大衆の住宅需要をしっかりと満たす。
- 人民大衆の精神文化生活を豊かにする。
- 社会統治の共同建設・共同統治・共同享受を推進する。